この記事は続編です
この記事は、以下の記事の続編です。
先に前編となる以下の記事を読むことをおすすめします。

国民総検査はしなくてもいい
前回は
「検査精度が低いから、むやみやたらと検査をしても意味ないぜ」
という話をしました。
すると
「『国民総検査をしろ』などとは言っていない」
とプンスカ怒っている人がいたので、もう少し詳しく説明しましょう。
検査対象者を1億人ではなく、1万人に絞ってみましょう。
1億人の中に1万人の新型コロナウイルス感染者が潜伏していると仮定します。
1万人に1人の割合で感染者がいる状態です。
この状態で、検査精度95%で、1万人を検査するとこうなります。
陽性 | 陰性 | |
---|---|---|
感染している | 1 | 0 |
感染していない | 500 | 9,499 |
赤字は、正しい検査結果。
青字は、間違った検査結果。
検査精度が95%なので、5%の割合で誤診が発生します。
感染者1人を見つけるために、偽感染者が500人発生します。
これは1億人に対して検査するときと同じ割合です。
検査対象が1万人だろうが1億人だろうが、誤判定が5%の確率で発生するのは一緒です。
じゃあ、どうすればいいの?
むやみやたらと検査をすると、1人の感染者を発見するのに、偽感染者が500人の割合で発生してしまうことが分かりました。
偽感染者というのは新型コロナウイルスに感染していないのに、陽性の判定が出た人のことをさします。
なぜ偽感染者が大量に出現するのかというと、感染していない人に対して検査をしているからです。
とんちみたいな話になってきますが、偽陽性(偽感染者)を出さないためには、感染していない人には検査をしなきゃいいんです。
感染者だけを対象に検査をすれば、結果はこうなります。
(1万人を検査した場合)
陽性 | 陰性 | |
---|---|---|
感染している | 9,500 | 500 |
感染していない | 0 | 0 |
赤字は、正しい検査結果。
青字は、間違った検査結果。
これで偽感染者が発生しなくなりますね。
ただし、これは理論上の話です。
「感染している」ことが分かっているのなら、そもそも検査をする必要がありません。
だから、運用上は「感染している人」に対してではなく、「感染しているっぽい人」に対して検査を進めます。
「感染していないっぽい人」に対しては検査をしません。
何かしらの基準を設けて、「感染しているっぽい人」を絞り込む必要が出てきます。
また、偽陰性(感染しているのに陰性だと判定される)の問題については、「感染しているっぽい人」を絞り込んで検査をしたとしても解決できません。
これについては、「陰性が出ても熱があるなら出歩くな」という社会的なルールで対応するしかないと思います。
検査対象者の基準
日本国内での、新型コロナウイルスの検査基準は以下の通りです。
- 37.5℃以上の発熱かつ呼吸器症状を有し、入院を要する肺炎が疑われる者(特に高齢者又は基礎疾患があるものについては、積極的に考慮する)
- 症状や新型コロナウイルス感染症患者の接触歴の有無など医師が総合的に判断した結果、新型コロナウイルス感染症と疑う者
- 新型コロナウイルス感染症以外の一般的な呼吸器感染症の病原体検査で陽性となった者であって、その治療への反応が乏しく症状が増悪した場合に、医師が総合的に判断した結果、新型コロナウイルス感染症と疑う者
厚生労働省健康局結核感染症課
新型コロナウイルス感染症に関する行政検査について(依頼)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000596426.pdf
要約すると
- 37.5度以上の熱があり、肺炎疑いがある人
- 医者から「コロナかもしれない」と診断された人
が検査対象になっています。
発熱がある人は片っ端から検査した方がいいんじゃないの?
新型コロナウイルスの検査対象者の基準は、「発熱」+「肺炎になりかけ」となっています。
「『発熱』がある人は取りあえず検査をしたほうがいいんじゃないの?」
と国民の大部分が感じていると思います。
「発熱」を基準に検査をするとどうなるか、シミュレーションをしてみましょう。
以下の資料によると、日本人は年に1.4回、風邪をひくそうです。
風邪に関する調査
https://www.nrc.co.jp/report/pdf/NRCrep_cold.pdf
「現在風邪をひいている人」=「発熱している人」=検査対象者とします。
1億人が年1.4回風邪をひくとすると、年間で延べ1.4億人の風邪患者が発生します。
1年は52週間なので、「今週は風邪気味で体調が悪い」という人が今現在の日本国内に270万人ほど存在することになります。
(1.4億人 ÷ 52週 = 2,692,308人)
季節による風邪発生率の偏りだとか、細かい条件はここでは無視します。
風邪気味の270万人に対して新型コロナの検査をするとどうなる?
1億人の中に、風邪気味の人が270万人、さらにその中に1万人の新型コロナウイルス感染者が潜伏していると仮定します。
新型コロナウイルスの検査対象者を風邪気味の270万人に絞ります。
- 新型コロナ感染者:1万人
- ただの風邪:269万人
感染者1万人に95%の精度で検査を行う
感染者1万人に対して95%の精度の検査を行うと、判定結果は以下のようになります。
- 「新型コロナ感染者」で陽性と判定される人: 9,500人
- 「新型コロナ感染者」で陰性と判定される人: 500人
精度が95%だと、5%の人(500人)が、感染しているのに陰性(非感染者)だと判定されてしまいます。
ただの風邪269万人に95%の精度で検査を行う
ただの風邪(新型コロナではない)269万人に対して、新型コロナ疑いとして検査をします。
検査精度が95%の場合、判定結果は以下のようになります。
- 「新型コロナ非感染者」で陽性と判定される人: 134,500人
- 「新型コロナ非感染者」で陰性と判定される人: 2,555,500人
精度が95%だと、5%の人(134,500人)が、感染していないにも関わらず陽性(感染者)だと判定されてしまいます。
想定される検査結果の表
陽性 | 陰性 | |
---|---|---|
感染している | 9,500 | 500 |
感染していない | 134,500 | 2,555,500 |
赤字は、正しい検査結果。
青字は、間違った検査結果。
精度が95%で風邪気味の270万人を検査すると、5%に相当する13万5千人分(500+134,500)に関しては間違った結果が表れます。
- 感度: 感染者を正しく陽性と判定する割合(95%、9,500人)
- 特異度: 非感染者を正しく陰性と判定する割合(95%、2,555,500人)
- 偽陽性: 非感染者を誤って陽性と判定する割合(5%、134,500人)
- 偽陰性: 感染者を誤って陰性と判定する割合(5%、500人)
陽性反応適中度(風邪の人が検査対象の場合)
陽性反応適中度というのは、
「陽性と判定された人の内、実際の感染者がどれくらいいるのか」
という指標です。
270万人の風邪患者(発熱者)の内、新型コロナウイルスの簡易検査(正診率95%)で陽性と判定されるのは
9,500人 + 134,500人 = 144,000人
陽性と判断されるのが144,00人いるのに対して、実際の感染者は9,500人です。
割合でいうと6.60%です。
発熱を基準に検査をすると、感染者1人を見つけるために、偽感染者が14人発生することになります。
(134,500 ÷ 9,500 = 14)
- 基準なしで検査: 陽性反応適中率0.19%
(感染者1人を発見するのに、偽感染者が500人発生) - 発熱を基準に検査: 陽性反応適中率6.60%
(感染者1人を発見するのに、偽感染者が14人発生)
無差別に検査をしたときに比べて、「発熱(風邪)」を基準に検査をしたほうが圧倒的に効率がいいのが分かります。
検査対象を絞り込むという作業が、いかに重要かお分かりでしょう。
しかし、効率が良くなったとはいっても、「陽性」が出た時の実際のコロナ感染者は15人に1人しか存在しません。
まだ実用的なレベルとは言い難いですね。
- 無差別に検査をすると、著しく陽性反応適中率が低くい
- 発熱を基準に検査をすると、無差別に検査をするよりも陽性反応適中率が良くなる
条件を絞り込んでから検査をしたほうが有効なので
- 発熱が◯日以上続いている人
- 肺炎の傾向がみられる人
などの条件設定をすればさらに的中率が上がります。
基準なしに検査をした場合の話は、こちらの記事をご参照ください。

発熱がある人は外出を自粛した方が良い
発熱がある人は以下のような行動を取るべきだと思います。
- 検査で陽性となった発熱者: 外出しない
- 検査で陰性となった発熱者: 外出しない(偽陰性かもしれないから)
- 検査を受けていない発熱者: 外出しない
発熱がない人の場合は、
- 検査で陽性となった非発熱者: 外出しない
- 検査で陰性となった非発熱者: 外出OK(ただし偽陰性の可能性もゼロではない)
- 検査を受けていない非発熱者: 外出OK
検査を受けても、受けなくても、熱があるなら外出は控えたほうがいいでしょう。
検査を受けた結果が陽性でも、陰性でも、熱があるなら外出は控えたほうがいいでしょう。
つまり、熱があったら外出しないのが一番。
現実問題としては、仕事だったり、子供の送り迎えだったりで外に出ない訳にはいかない状況の人がほとんどだとは思いますが。
風邪検査論は宗教論争
精度の低い検査を乱発すると偽陽性・偽陰性が発生する。
これは事実です。
発熱を基準に積極的に検査をすると、検査精度が95%の場合、新型コロナウイルスの感染者1万人を見つけるためには、試算では14万人の偽感染者が発生します。
この人たちに医療リソースを食いつぶされると、医療現場が崩壊して、イタリアのように死者が爆発的に増える可能性があります。
医療リソース等を無視してもいいのならば、個人的にベストだと思うのは、以下のような手順です。
- 疑わしい人は片っ端から検査をする
- 陽性だった人は全員隔離する
(真陽性は想定1万人、偽陽性は想定14万人) - 陰性の人も発熱があれば隔離する
(偽陰性、感染者なのに誤判定されている可能性があるから)
上記の手順の問題点は、
- 検査するためのリソースが足りるのか?
- 隔離施設のリソースが足りるのか?
- 発症者に対する医療リソースが足りるか?
という点です。
簡易検査キットが複数の会社から提供されれば、検査リソースの問題は解決する可能性があります。
隔離施設は絶対に足りないので、自宅待機をさせるのが現実的でしょう。
そして、重傷者だけ医療施設に収容することになるでしょう。
そうなると、簡易検査の結果を受けて
- 陽性の人: 実際に感染しているか感染していないかに関わらず、自宅待機
(陽性者の内、15人に14人は実は感染していない) - 陰性の人: 偽陰性の可能性もあるので、自宅待機
発熱があり検査を受けた人は、「陽性が出ても陰性が出ても、自宅待機をしろ」ってことになると思います。
「陽性が出ても陰性が出ても、自宅待機をしろ」となった場合、
じゃあ「検査することに意味はあるのか?」という話になってきます。
ここに意味があると考えるか、意味がないと考えるかは、宗教論争的な答えの出ない問題です。
新型コロナ検査の論点を整理
新型コロナウイルスの検査の論点は、
- 偽陽性・偽陰性を防ぐためにはどうすればいいか?
- 偽陽性・偽陰性が含まれているという前提で社会がどう対応すべきか?
- 真陽性の新型コロナ感染者をどう扱うか?
ここに集約してくると思います。
検査慎重派は、
- 偽陽性・偽陰性を防ぐためにはどうすればいいか?
ここを重視しています。
精度の悪い検査のせいで、医療リソースを食いつぶしたくありません。
何を基準に検査をするか、線引きが重要になってきます。
「検査をするな」と言っているのではなく、「意味のある検査をしろ」と思っています。
検査推進派は、
- 偽陽性・偽陰性が含まれているという前提で社会がどう対応すべきか?
ここを重点的に議論すべきでしょう。
感染していないのに陽性反応が出る人が大量発生します。
その人たちをどう扱うか、検討が必要です。
大量の偽感染者が含まれていることが予想される場合、どう隔離するのか?
同じ試薬で何度も再検査するのか?
それとも再検査には専門家による精度の高い検査をするのか?
再検査は何日間隔で実施するのか?
また、感染しているのに陰性(非感染者)だと判定される人も出てきます。
検査対象者が増えると、こういった人たちの管理が難しく、野放しになる可能性が高いです。
「陰性でも発熱がある人は外出しない」というルールを社会で共有できるかがポイントになってくると思います。
検査をするかしないかで喧嘩している場合ではありません。
検査の結果どうなるか。
検査の後にどういった対応をするか。
これを議論しないと意味がありません。
まとめ
単純な発熱を基準に、精度95%の新型コロナウイルス検査を行うと、陽性反応適中率は6.60%程度と推定されます。
感染者1人を発見するのに、偽感染者が14人発生します。
あまり実用的なレベルではないですね。
一般的に検査精度は100%ではありません。
偽陰性(感染者なのに陰性になる)、偽陽性(感染していないのに陽性になる)は、特殊なケースではありません。
検査数が多くなると結構な頻度で発生します。
発熱がある人は、検査で陰性反応が出てもむやみに出歩かない。
偽陰性の可能性があるので、自宅待機で経過観察をしましょう。
陽性反応が出た人も落ち込まない。
陽性=感染ではありません。
検査基準がゆるいとかなりの割合で偽陽性が発生します。
続編。


コメント
https://www.kurabo.co.jp/bio/support/download.php?M=PL&CID=4#catalog232
ここの
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)検査キット(イムノクロマト法)
のカタログから読めますよ。
>試薬で一番大事なのは
あなたの意見はどうでもいいんですよ。
「記事を書くのに一番大事なのは」なんでしょうかね?
問題なのは、この記事がちゃんとしたソースも参照せずに、
適当なでたらめをぶちまけているだけ、
ようするに、デマ記事になっているということです。
あなたはデマの拡散がしたいのですか?
なお、クラボウの検査キットでは血中の抗体を調べるので、
まったく感染していないにも関わらず抗体が検出されるとは考えにくい。
(試薬の不備で出ることはあり)
一方、感染初期の場合、抗体が検出されず偽陰性になることはあるだろう。
感度100%は考えにくい。
陰性判定率=特異度(真陰性率)であって、
(ここら辺は翻訳者が専門用語を使っていない可能性はあるが)
陰性判定率100%=特異度100%で偽陽性の可能性0と考えるのが妥当。
よって、カタログ通りなら、偽陽性は発生しない。
陽性判定率=感染者を正しく陽性と判定する率=感度
陰性判定率=非感染者を正しく陰性と判定する率=特異度
という解釈ですね。
私は
陽性判定率=陽性反応が出た人のうち真陽性の率=陽性反応的中率
陰性判定率=陰性反応が出た人のうち真陰性の率=陰性反応的中率
じゃないかと思うんですよね。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%99%BD%E6%80%A7%E9%81%A9%E4%B8%AD%E7%8E%87
>あなたの意見はどうでもいいんですよ。
個人的な意見ではなく、検査における設計思想・原理原則の話です。
がん検診などでは
偽陽性は再検査すればすむんで許容できるんですけど
偽陰性は病状が潜んでいるのにスルーしちゃうと命に関わるので絶対ダメなんですよ。
コロナの検査キットは、そういう設計思想で作ってないんですかねぇ。
クラボウの公式発表も無視して、変な記事を書いていないか?
クラボウ公式↓
ttps://www.kurabo.co.jp/bio/support/catalogDownload.php?f=232&file_num=1
感染の初期段階で生成されるIgM用と
感染後血液中に多く生成されるIgG用の2種類の試薬キットがあり、
・IgM検出用キット
陽性判定率:82.58%
陰性判定率:100%
正診率:95.72%
・IgG検出用キット
陽性判定率:76.38%
陰性判定率:100%
正診率:94.24%
併用すればさらに精度が上がる、というのが発表内容。
どちらのキットも陰性判定率が100%だから、偽陽性は出ない。
クラボウの発表通りなら、1万人検査しようと、1億人検査しようと、偽陽性ゼロ。
ソースをちゃんと確認したら記事は撤回した方がいい。
リンクが見られないのですが
その資料はどこから見られますか?
試薬で一番大事なのは
感染の見落としをしないことなので、
偽陽性を出すのはセーフだけど
偽陰性を出すのはアウトなんですよ。
陰性判定率:100%
というのは、陰性の判定が出た人は感染していないことを100%保障するってことだと思いますよ。
陽性判定率:82.58%
というのは、陽性と出た場合でも、17.42%は感染していない人が含まれるという話だと思います。
(偽陽性が発生する)
この割合は検査対象を絞った場合の数字だと思うので、検査対象を広くすると陽性判定率が下がると思います。