種苗法改正と国内品種(イチゴ、ブドウ等)の海外流出

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種苗法改正案、要点まとめ

種苗法改正について要点をまとめてみた。

種苗法改正の目的

農業者の皆様に、優良な品種を持続的に利用してもらうためです。

日本で開発されたブドウやイチゴなどの優良品種が海外に流出し、第三国に輸出・産地化される事例があります。また、農業者が増殖したサクランボ品種が無断でオーストラリアの農家に譲渡され、産地化された事例もあります。このようなことにより、国内で品種開発が滞ることも懸念されるので、より実効的に新品種を保護する法改正が必要と考えています。

農林水産省
種苗法の一部を改正する法律案について
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/shubyoho.html

ブランド品種を守るために、栽培を許可制にするのが種苗法改正の目的です。

サクランボは「オーストラリア」への流出と明言しているのに、ブドウやイチゴは「第三国」への流出と濁してあるのはなぜだろう?
第三国っていったいどこのことでしょうね?

自家増殖が禁止に?

自家増殖は一律禁止になりません。

現在利用されているほとんどの品種は一般品種であり、今後も自由に自家増殖ができます。

改正法案で、自家増殖に許諾が必要となるのは、国や県の試験場などが年月と費用をかけて開発し、登録された登録品種のみです。そのような登録品種でも許諾を受ければ自家増殖ができます。

農林水産省
種苗法の一部を改正する法律案について
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/shubyoho.html

一律禁止ではありません。
法改正で登録品種は自家増殖禁止になりますが、一般品種は自家増殖OKです。

登録品種というのは、「あまおう」や「シャインマスカット」などのいわゆるブランド品種です。
1パック1万円するような高級品ですね。

新品種は、開発にお金も時間もかけているので、勝手に栽培されると投資が回収できません。
そうなると誰も新種開発を行いません。
農業の衰退につながります。

自家増殖とは?

自家増殖とは、2次栽培のことです。

たとえば、新しく農業を始めようと思って、「ジャガイモ」の種イモ100個を買ってきました。
100個植えたら、半年後に1,000個に増えました。
1,000個のうち、900個を商品として販売して、残りの100個はまた種イモとして植えました。
これを繰り返すと、種イモを業者から購入するのは最初の1回だけで済みます。

自家増殖OKだと、収穫したものを種イモとして再利用するのはOKという意味になります。

自家増殖禁止だと、収穫したものを種イモとして再利用するのは、禁止という意味になります。
毎回種イモを業者から買うか、自家増殖の許可を取得する必要があります。

登録品種と一般品種

登録品種というのは、新品種のことです。
農業界における特許出願のようなものだと思ってください。

一般品種というのは、昔からある広く一般に普及している品種のことです。
また、登録品種も一定期間(25~30年)が過ぎると一般品種になります。

品目別の一般品種の割合

  • 米: 84%
  • みかん: 98%
  • りんご: 96%
  • ぶどう: 91%
  • ばれいしょ: 90%
  • 野菜: 91%

一般品種が9割りを占めます。
種苗法が改正されても、一般の農家は影響を受けません。

ブランド品種を無断で栽培しているところは影響を受けます。

登録品種は自家増殖禁止ですが、許可を取れば自家増殖もできるようになります。
無断で自家増殖するのはやめてくれって話ですね。

無断で自家増殖されると何が困るのかというと、知らない間に勝手に増殖されて、知らない間に第三者へ譲渡されることがあるからです。

日本ブランド流出事件、レッドパール(イチゴ)、韓国

2018年の韓国・平昌オリンピックで女子カーリング日本代表が銅メダルを獲得し、一躍ブームになりました。
また、「もぐもぐタイム」と呼ばれる試合中におやつを食べる(栄養補給をする)様子も話題になりました。

その「もぐもぐタイム」に食べていたイチゴに対して、鈴木夕湖(すずき・ゆうみ)選手が「韓国のイチゴおいしい」と発言して物議をかもしました。
韓国のイチゴが日本からの盗作だったためです。

カーリング娘。たちが食べていたのは、「雪香(ソルヒャン)」という品種です。
これは韓国で栽培されたものですが、もとはといえば日本の「レッドパール」と日本の「章姫(あきひめ)」を掛け合わせたものです。

レッドパール無断栽培事件

レッドパールを開発したのは、愛媛県のいちご農家・西田朝美さん。
1993年、6年間の歳月を費やし品種改良を重ね、レッドパールというイチゴの新品種が完成しました。

1998年、そんな西田さんの元へ、韓国人の金重吉(キム・チュンギル)氏がやってきます。
レッドパールの苗を譲ってくれと言われましたが西田さんは断ります。
しかし、どうしても譲ってくれと聞かないので、
「5年間のみ、本人のみ有料で栽培ができる、他者へは許諾しない」という条件で契約書を交わします。

しかし、この契約は守られず、韓国人たちは勝手にレッドパールの苗を栽培し始めます。
2006年には、韓国市場で流通するイチゴの80%が「レッドパール」と「章姫」というありさまでした。
(「章姫」も日本の品種です)

既に個人レベルでは対抗できない事態となり、日本政府が動きます。
韓国に対してロイヤリティーの支払いを求めると、韓国は「レッドパール」と「章姫」を交配させて、「雪香」という別の品種を作ります。
そして、「雪香」は韓国で作ったオリジナルの品種なのでロイヤリティは払わないと言い放ちます。

韓国は、日本の品種と日本の品種を掛け合わせて、韓国品種だと言い張っています。
しかもこの品種開発は韓国政府が国ぐるみで主導したものです。

農林水産省
国内育成品種の海外への流出状況について
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/tizai/brand/kentoukai/attach/pdf/3siryou-6.pdf

日本ブランド流出事件、シャインマスカット、中国・韓国

シャインマスカットは30年の月日をかけて開発され、2006年に日本で品種登録されました。
開発を行ったのは、農研機構(旧農林水産省果樹試験場安芸津支場)。
「ブドウ安芸津21号」と「白南」を交配させた品種です。

海外への輸出を想定していなかったため、国外での品種登録は行っていなかった。

しかし、苗木が無断で中韓へ持ち出されて、勝手に栽培されている。
苗木を無断で海外に持ち出す行為は違法です。

しかし、いったん持ち出されてしまうと、勝手に栽培をされたとしてもそれを禁止する手段がありません。
現地国で品種登録を行っていればロイヤリティが発生するのですが、日本で品種登録してから6年を過ぎると、海外で品種登録することができなくなります。
つまり、2012年時点で品種登録をしていなかったので、既にお手上げ状態です。

日本ブランド流出事件、紅秀峰(サクランボ)、オーストラリア

紅秀峰(べにしゅうほう)は、1991年に品種登録された山形県のブランドサクランボ。

紅秀峰の「育成者権者」は山形県となっています。
そのため、紅秀峰の栽培には山形県の許可が必要です。

しかし、山形県の業者が無断でオーストラリア人に苗木を販売し、オーストラリアで勝手に栽培が始まってしまいました。

山形県はオーストラリアの業者を告訴し、栽培の差し止めこそならなかったものの、日本への輸入を禁止する措置を取ることで和解しています。

種苗法改正で何が変わる?

種苗法を改正しても、初めからルールを守る気がない人間が、苗を無断で持ち出し、外国で勝手に栽培することを止めるのは難しいです。

しかし、紅秀峰事件のように、国内の業者が海外の業者に無断で苗木を分配するようなケースに対しては抑止力となります。

新品種の栽培を許可制にすることで、よくわからない業者がいつの間にか栽培をしているとういことが起こりにくくなります。
勝手に栽培したらその時点でアウトなので。

どこの誰が、どれだけの数を栽培しているかを把握しやすくなります。
これにより、知らないうちに苗木が流出しているという事態が発生しにくくなります。

まとめ

種苗法の改正について、現在は改正案が出てきたところ。
まだ、決定ではない。

種苗法の改正は、開発者の権利を守るため。

現状では、日本ブランドの血と汗の結晶が海外流出しまくっている。
特に中国と韓国。

流出してしまったものを栽培禁止にするのは結構難しい。

日本から海外に流出しないように気を付ける。
種苗を許可制にして、どこの誰が栽培しているか把握することで、流出しにくい環境を作る。

勝手に栽培できないように、自家増殖禁止にする。
ただし、自家増殖禁止になるのは登録品種(新品種、ブランド品種)だけ。

一般品種(農作物の9割)は自家増殖してもOK。
(いちいち許可を取らなくても大丈夫)

コメント

  1. これに反対する人たちは、どういう意図があるんだ?と勘ぐってしまいますね。

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