うま味は日本人科学者が発見した第5の味

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日本では古くから料理に昆布だしが使われてきました。昆布に含まれる成分においしさの元があると、経験的に知られていたのです。これに注目した東京帝国大学・池田菊苗博士は、昆布だしの味の正体を明らかにする研究を始めました。そして1908年、昆布からグルタミン酸を取り出すことに成功。グルタミン酸が昆布だしの主成分であることを見出し、その味を「うま味」と名づけました。

うま味は、甘味、酸味、塩味、苦味に次ぐ5つ目の味として、世界に認められることになりました。しかし、その道のりは決して平坦ではありませんでした。今回は、うま味の発見から普及までの歴史と、日本と海外での認識の違いについて紹介します。

うま味は世界共通の公式用語に

グルタミン酸につづいて、かつお節に含まれるイノシン酸、干ししいたけに含まれるグアニル酸もうま味を呈することが解明されました。これらの研究成果は国際的な場でも取り上げられ、1985年に開催された第一回うま味国際シンポジウムを機に、うま味(英語表記=UMAMI)という用語が国際的に使用されることになりました。

このシンポジウムでは、うま味は味覚受容体によって感じられる独立した味であることが確認されました。また、うま味は食欲を増進させたり、食事の満足感を高めたりする効果があることも報告されました。

うま味は、日本人が発見した味として、世界に誇るべき文化遺産だと言えるでしょう。

うま味を発見した池田菊苗博士は日本の十大発明家の一人

うま味の成分を解明した池田菊苗博士は、グルタミン酸を主成分とした調味料(グルタミン酸ナトリウム)の製造法特許を取得。博士はこの功績によって、「日本の十大発明家」の一人に選ばれました(特許庁は、日本の工業所有人権制度100年〈昭和60年4月18日〉を機に、歴史的な発明者の中から10名を選定。)。

1909年には最初のうま味調味料が市販され、1940年代までには世界各地でも販売。発明から約110年たった現在では世界100カ国以上で広く使われています。

池田博士は、日本の食文化に貢献しただけでなく、世界の食文化にも影響を与えた偉大な発明家だと言えるでしょう。

英語でも“umami”でOK! 和食の要・うま味は第5の味として世界に浸透した

日本の文化でもある“karate”や“sushi”などは英語圏でも通じる単語ですが、なんと「うま味」という言葉も海外で通じるそうです。

英語圏の国々では、うま味をそのままアルファベット表記で“umami”としています。発音については日本語と異なり、うまみの「ま」の部分にアクセントをつけて発音します。日本語では「う」にアクセントをつけて発音しますが、英語圏ではどちらかというと「ウマーミ」と発音されます。

なぜ日本語のうま味がそのまま海外でも使われているのかというと、うま味の発見者が日本人だったことに由来しています。しかし、出汁を取る文化のない海外では、味といえば「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」の4種類だと考えられていました。そのため、うま味が提唱された時点では海外にほとんど浸透することなく、認められたのは1985年のことだったのです。そして、うま味の存在が認められたことから、日本で使われていた「うま味」という言葉がそのまま“umami”として採用されることになりました。

実は海外と日本では「うま味」に関する認識が少し異なっています。海外ではうま味が味として認められた際には、今まで存在していた4種類の味に「うま味」という味が追加されたものだと考えられました。そのため、うま味は今まで知られていなかった味という意味で“the hidden fifth taste(隠れていた第5の味)”と表現されることもあるそうです。一方で、日本人はグルタミン酸などのうま味成分を指して「うま味」と表現することが多いですよね。食べ物を口にした時に、甘い、酸っぱい、しょっぱい、苦いという言葉が出てくることがあっても、第一声でうま味のことを言葉にする人はほとんどいません。また、他の4種類と違って、「料理の味の奥深さ」を表す意味合いで「うま味」という言葉を使うことが多いです。

ちなみに、うま味以外の味を英語にすると以下のように表現します。
甘味・・・sweetness
酸味・・・sourness
塩味・・・saltiness
苦味・・・bitterness

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