COP28 議長国を務めるアラブ首長国連邦(UAE)のエネルギー移行やサステナビリティ実現への取り込みと実践について紹介します。
UAEは、環境保護の強い価値観を反映した先駆的な取り組みやプロジェクトを通じて、持続可能性の分野で長い実績を持っています。
UAE 政府は、地域レベルおよび世界レベルで持続可能な開発を促進するために多くの政策と実践を実施し、カーボンニュートラル(気候中立性)を達成するための取り組みの支援や陸と海の生命を守るための取り組みの強化など、さまざまな分野での多くの取り組みを通じて、持続可能な未来の実現に向けて集団行動のアプローチをとっています。
持続可能なインフラの実現に向けた政策
UAEは、水とエネルギーのインフラストラクチャの計画と取り組みにおいて、再生可能エネルギーの利用やエネルギー効率の向上など、持続可能性を重視しています。
以下に、主な政策やプロジェクトを紹介します。
UAE エネルギー戦略 2050
UAEは中東で最初にパリ協定を批准するとともに、2021年には、日本と同じく2050年までに温室効果ガス排出量のネットゼロを実現すると宣言しました。
2017年にUAE初の統一エネルギー戦略として、「UAEエネルギー戦略2050」が発足しました。この戦略は、あらゆる分野での成長に向けた快適な経済環境を確保しながら生産と消費のバランスをとり、地球環境への義務も考慮した戦略となっています。
しかし、エネルギー部門における昨今のダイナミックな変化及び低排出エネルギー技術が進んできたことを受け、「UAEエネルギー戦略2050」が2023年7月に改訂され、2030年の目標と2050年のネットゼロ達成の目標が設定されました。 そして、それに先立って、UAE大統領、シェイク・モハメッド・ビン・ザイード・アル・ナヒヤーン殿下が「明日のため今日」というスローガンの下2023年を持続可能性の年と宣言しました。
2023年7月に改訂されたエネルギー戦略は、中間目標として2030年までに再エネの発電容量を3倍にし、総発電量に占めるクリーンエネルギーの割合を32%まで引き上げるとしました。また、気候変動の影響を軽減し、気候中立性を達成することを目指し、2030年までに約400億~545億ドルを投資して、再生可能エネルギーの容量を3倍にするとともに、2031年までにエネルギーミックス全体に占めるクリーンエネルギーの割合を30%まで引き上げることを目標としています。さらに、二酸化炭素排出量を削減し、環境の持続可能性を高めるために、個人や組織のエネルギー消費効率を向上させることにより、2030年までに1,000億ディルハム(約270億ドル)の財政節約と50,000人の雇用創出が可能になります。
再生可能エネルギーを使った海水淡水化パイロットプログラム
経済成長及び人口増加によって、きれいな飲み水の需要が増す中、水の安全保障に向けた長期的かつ持続可能な解決策として、 2013年にマスダール社(アブダビを拠点として持続可能な低炭素エネルギー事業を展開する再生可能エネルギー企業)は、 再生可能エネルギー源による電力供給が適した先進的なエネルギー効率の高い海水淡水化技術の試験・開発を行うパイロットプログラムを開始しました。このプロジェクトによって、淡水化技術を再生可能エネルギーに結び付けることで、太陽エネルギーなどのUAEの豊富な資源から恩恵を受け、それを水の安全を確保するためのソリューションとして採用すれたということです。
2006年に設立されたマスダール社は、UAEにおけるクリーンエネルギー開発の旗振り役として、17年以上にわたり再生可能エネルギー事業を展開しています。また、世界40カ国以上で活動しており、合計約20ギガワット(GW)の容量を持つ再生可能エネルギープロジェクトのポートフォリオに投資しています。
「ドバイ統合エネルギー戦略2030」
ドバイ最高エネルギー評議会は、2030 年までのドバイのエネルギーに関する統合戦略を策定しました。同戦略は、エネルギー源の多様化と開発、供給の安全性の確保、電力、水、燃料の需要の効率と有効性の向上、二酸化炭素
二酸化炭素排出量の削減を目指しています。 2030年までに、発電分野における再生可能エネルギー利用割合は5%、原子力エネルギー12%、クリーンコール12%、残りがガス利用となる予定です。しかし、2015年1月、ドバイ最高エネルギー評議会は、ドバイにおける太陽エネルギー源の割合を2020年までに7%、2030年までに15%に増やすことを含む目標を修正しました。
COP28の開催地のドバイ・エキスポ・シティ
COP28の開催地であるエキスポ・シティ・ドバイは、世界最大級の太陽光発電所のモハメッド・ビン・ラシッド・ソーラー・パークで生産される再生可能エネルギーによって稼働されることで、排出量削減とともに、 持続可能性と循環経済の重要性について、UAEから世界へのメッセージを発信しています。
エキスポ・シティ・ドバイは、2023年10月1日から2024年3月31日まで開催される「ドバイ万国博覧会2023」の会場でもあります。この博覧会は、「人類の心と精神をつなぐ」をテーマに、190カ国以上が参加し、科学、技術、文化、芸術などの分野での革新的なアイデアやソリューションを紹介します。
国家電気自動車(EV)政策
国家EV政策は、UAE政府および地元パートナー、民間セクターとの協力関係を発展させ、電気自動車所有者のニーズをサポートするEV充電の全国ネットワークを構築し、UAEにおける電気自動車市場を管理することを目的としています。同政策のグリーン・モビリティ・プロジェクトを通じて、2050年までに二酸化炭素排出量を削減し、運輸部門のエネルギー消費を20%削減することに貢献します。また、中国の自動運転開発会社WeRide社の自動運転プロジェクトが予備承認されました。この承認は、持続可能な輸送分野における技術開発を支援し、二酸化炭素排出量を削減するためのものです。
マングローブ
2022年のCOP27の際、UAEの提起により、「気候変動のためのマングローブ・アライアンス(MAC)」が立ち上がりました。MACは、気候変動の課題に対処する解決策の一つとして、マングローブ林の面積を世界的に拡大することを目的としています。UAEは、マングローブの面積を増やすことに成功した世界でも数少ない国のひとつです。
2023年からさらに、マングローブをを増やすためのイニシアティブを立ち上げ、その一つとして、OP28に出席する訪問者1人につきマングローブの木10本を植樹する「ガース・アル・エマラート」(UAE植林イニシアチブ)の立ち上げを発表されました。
UAEにおける持続可能性の課題
UAEは、2015年に国連総会によって設定され、2030年までに達成される予定の持続可能な開発目標の達成に焦点を当てています。これにより、クリーンエネルギー、手頃な価格で十分な食料、質の高い教育、医療、持続可能な経済成長へのアクセスが可能になります。健全な環境問題と資源効率の向上はすべて、UAE に強く響く問題です。
UAE気候変動・環境省は、関連する連邦および地方団体と協力し、生態系と天然資源の保護とそしてその持続可能性を確保することを目的とした数多くのプロジェクトの実施を通じて、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に取り組んでいます。
これらの取り組みの中で最も顕著なものは次のとおりです。
- 活力ある住宅街づくりのための国家政策
- 運輸部門の排出量を削減する国家政策
- UAE エネルギー戦略 2050
- 国家気候変動計画 2017-2050
- UAE エネルギー戦略 2050
- 気候変動への適応のための国家計画
- 気候イノベーション交換フォーラム(CLIX)の取り組み
- UAEの自然資本スマートマップ
- サメの保護と管理に関する UAE 国家行動計画 2018 ~ 2021 年
- アラブ首長国連邦におけるウミガメ保護のための国家行動計画 2018 ~ 2021 年
- 2019年から2030年までの水産資源を維持するための国家枠組み
- UAEの自然資本スマートマップ
- エミレーツにおける生息地地図プロジェクト
- ワシントン条約電子許可プログラム (2017)
- 重要野鳥生息地の特定 (IBA) プロジェクト
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