樹木葬:自然との共生を尊ぶ新たな墓地選択肢
樹木葬(じゅもくそう)は、墓石や墓標に代わり、自然の樹木が故人を永遠に記念する墓地の形態です。この記事では、樹木葬の概要、背後にある思想、そして日本と世界での展開について詳しく探ります。
概要
樹木葬は、日本の墓地において、法律に基づいて遺骨を埋葬し、遺骨の周囲にある樹木を墓標として用いる先進的な方法です。墓地の中央には象徴的な「シンボルツリー」が植えられ、その周りの区画に遺骨が埋葬されます。このコンセプトは、1999年に岩手県一関市で祥雲寺が提案し、初めて日本で実現されました。樹木葬墓地は、自然樹林地を墓地に変えた点で他と一線を画し、個別の樹木に遺骨を埋葬する従来の樹木葬とは異なります。イギリスではWood Land Burialとして知られ、樹木葬墓地は国内各地で見られます。日本でも、里山や放置林を墓地にする試みはあるものの、2014年現在、実現したのは樹木葬公園墓地のみです。
2012年には、小平霊園で都立霊園初の樹林墓地が完成し、2014年には樹林墓地に隣接して樹木墓地が設けられました。樹木墓地と樹林墓地の違いは、樹木墓地では遺骨を個別に埋蔵するのに対し、樹林墓地では合葬して一緒に埋蔵することです。
樹木としての選択肢
樹木葬で墓碑として用いられるのは、一般的に低木とされています。高木は遺骨を妨害する可能性があるため、広がりの少ない低木が好まれます。ただし、管理者が根の広がりを計画的に考慮し、高木を植える場合もあります。
主なシンボルツリーには、オリーブ、バラ、サルスベリ、サクラ、ウメモドキ、エゾアジサイ、ムシカリ、ツリバナ、モミジなどがあります。植樹する地域の条件や生態系への影響を検討し、選択されます。
背後にある動機
樹木葬が注目される背後には、自然への回帰への願望や環境保護への関心があります。また、都市部での人口増加により、公営墓地が不足し、無縁墓地への需要が高まっているため、墓地の維持管理が新たな方法を求められています。
散骨との違い
散骨と比較して、樹木葬は法的に整備された墓地でのみ遺骨を埋葬できます。このため、遺骨遺棄罪の心配はありません。樹木葬墓地に改葬する場合には、市区町村長の改葬許可が必要です。
樹木葬は、自然と共に生きる新しい墓地選択肢として注目されています。遺骨を樹木に還すことで、故人は自然と一体化し、新たな生命のサイクルの一部となります。その環境への配慮や個別の記念方法が、多くの人々に支持されています。
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