デンキウナギの放電が水中生物の遺伝子組み換えを引き起こす可能性

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名古屋大学の研究グループは、デンキウナギの放電が周囲の水中生物の遺伝子を変化させることを実験で確認した。
デンキウナギの放電は、エレクトロポレーションという遺伝子工学の技術と同じ原理で、水中に浮遊するDNA断片を細胞に取り込ませることができる。
この現象は、自然界での遺伝子組み換えのメカニズムとして機能する可能性があり、種の進化に影響を与えるかもしれない。

背景

デンキウナギは、南米北部に生息する近縁の熱帯淡水魚3種からなるグループである。電気的インパルスを利用して交尾相手を見つけ、求愛し、獲物を探す。最大で860Vの放電が可能で、人間の成人をも気絶させることができる能力で知られている。この能力は、1775年に電気ウナギが電気を発生させる謎を解明するために初めて研究されたときから、科学者たちに知られ、高く評価されていた。これらの発見は電池の発明に貢献した。

微生物の遺伝子を電気で変えることは一般的な実験技術である。この技術はエレクトロポレーション(電気穿孔法)と呼ばれ、細胞膜に一時的な孔(あな)を作り、DNAやタンパク質など目的の分子が標的細胞に入るのを可能にする生物物理的プロセスである。細胞は自らこれらの孔を修復し、新たな遺伝情報を発現しながら生存を続ける。

研究内容

名古屋大学の本道栄一教授(生命農学研究科)と飯田敦夫助教(同)が率いる研究グループは、デンキウナギの放電が水中生物の遺伝子組み換えを引き起こす可能性があるという仮説を立てた。彼らは、水中で電気パルスが流れると、周囲の生物(微生物だけでなく)にも影響を及ぼし、水中に浮遊するDNA断片を取り込む可能性があると考えた。こうした浮遊するDNA断片は環境DNAとして知られている。

彼らは、実験室で育てたゼブラフィッシュの幼魚を、緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子マーカーと一緒にDNA溶液に入れた。次に、彼らはデンキウナギを囲いに入れ、餌に食いつかせることで電気を放電させた。もしその結果、ゼブラフィッシュの幼生細胞がDNAを取り込んだならば、ゼブラフィッシュは緑色に光ることになる。

研究結果

実際に、研究グループは、デンキウナギが発するパルスにはばらつきがあるものの、ゼブラフィッシュの5%が緑色に蛍光を発することを発見した。これは、遺伝子導入が実際に行われたことを示す生きた証拠である。

「デンキウナギの放電は、通常エレクトロポレーションに使用される機械とはパルスの形状が異なり、電圧も不安定ですが、デンキウナギ自身の放電が細胞への遺伝子導入を促進したことを示しています」と飯田助教は説明した。「デンキウナギや発電する他の生物が、自然界の遺伝子組み換えに影響を与える可能性があるのです」。

研究の意義と展望

この研究は、放電を介した遺伝子導入が自然の生息環境で起こりうることを示唆している。これは、自然界での遺伝子組み換えのメカニズムとして機能する可能性があり、種の進化に影響を与えるかもしれない。このような現象が自然界で観察されたのは今回が初めてではない。たとえば、落雷は線虫や土壌細菌の遺伝子を変化させることが以前発見されている。

しかし、今回の発見だけでは、放電が自然環境において遺伝的要因として作用すると断定はできない。研究グループは、今後もデンキウナギや他の発電生物の放電が水中生物の遺伝子に及ぼす影響をさらに調査する予定である。

「私はこのような『思いもよらぬ』『突拍子もない』着想から新しい生物現象を発見しようとする試みが、世の中に生き物の奥深さを啓発し、将来のブレイクスルーのきっかけになると信じています」と研究者は言う。

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