表情フィードバック仮説とは？

表情フィードバック仮説は、感情と顔の表情の相互関係についての心理学的な仮説です。この仮説によれば、人々の顔の表情は、その人の感情を制御するだけでなく、感情そのものをも調整する役割を果たすとされています。

表情フィードバック仮説は、次のような基本的なアイデアに基づいています。人々は自分の顔の表情を認識し、その表情が脳に感情を引き起こすと仮定します。つまり、笑顔をすることで幸福感を感じるし、怒りの表情をすることで怒りを感じる、などです。

表情フィードバック仮説は、心理学者ウィリアム・ジェームズによって初めて提案されました。ジェームズは、感情は身体の反応によって引き起こされるという「感情の誘導理論」を提唱し、その一環として表情の役割を強調しました。

表情フィードバック仮説を支持する実験が行われています。一例として、顔の筋肉に一時的に制御不能な表情をつけることによって、その表情に対応する感情が引き起こされることが観察されました。たとえば、笑顔の表情を作ると、幸福感が増すことが示されています。

この仮説に反する研究も存在します。逆に、感情が顔の表情に影響を与えるという立場もあります。つまり、感情が先に存在し、それが顔の表情を形作るとする説もあります。

表情フィードバック仮説は、臨床心理学やセラピーセッションにも応用されます。感情障害やストレス管理の治療において、患者が感情を意識的に制御するために顔の表情を変えるトレーニングが行われることがあります。

要約すると、表情フィードバック仮説は、人々の顔の表情が感情に影響を与え、その逆も成立するという仮説です。この仮説に基づいて、感情の調整や心理療法のアプローチが開発されており、感情と顔の表情の複雑な相互関係を理解するために幅広く研究が行われています。