日本にはコンビニよりも歯医者が多く存在します。これはなぜでしょうか?歯医者が儲かるからでしょうか?実はそうではありません。歯医者が多いのは、昭和40年代の国策の成果だったのです。この記事では、歯医者がコンビニよりも多い理由と、歯医者が倒産しない理由、そして医療の産業化について解説します。
歯医者が多いのは国策の成果
2010年の統計によると、全国の歯医者は約6万8千施設でした。一方、コンビニの店舗数は約4万3千店舗でした。つまり、歯医者はコンビニの1.5倍もあったのです。これは、昭和40年代の日本の社会情勢に起因します。
当時は第2次ベビーブームで人口が増え、高度経済成長により生活習慣と食生活が大きく変化しました。この影響でとても多くの人が虫歯になりました。当時は歯医者が少なく患者が溢れてしまい、とても深刻な歯医者不足となりました。
そこで当時の国は歯科医師の育成に力を入れる政策を行いました。患者が多く歯医者はとても儲かったこともあり、そのころに医院数が激増しました。歯医者が多い理由はこのような歴史があったからです。
ちなみに先ほど数を比較したコンビニは、1975年に日本に初登場しました。セブンイレブン豊洲店が第1号だそうです。歯医者が初めてできたのは明治維新からまもなくの1875年で、小幡英之助という人物が開いたそうです。
歯医者が倒産しない理由
歯医者が多いということは、競争も激しいということです。しかし、歯医者が倒産するというニュースはあまり聞きません。歯医者が倒産しない理由は何でしょうか?考えられる要因は以下の通りです。
単価が高い
歯科診療は国民皆保険でほとんどの人が3割負担〜1割負担となっています。窓口で支払う料金は3千円でも実際は1万円の収入となります。大体一人あたりの診療報酬の平均は一回6千円くらいなので20人診れば12万の売上になります。言わば殆どが税金で賄われています。ランチ専門の飲食店だと千円未満のところがほとんどなので120人以上お客さんが来ないと同等の売上になりません。平均的な個人歯科医院の売上は月400万弱となっており、院長1人 スタッフ3人程度であれば大体3割は残るので月収は100万以上になります。ただし歯科医院の開業は初期投資が多額なのでこの収入から何千万もの借金を返していかなければなりません。
自費診療がある
自費診療は医科では美容の分野しか聞きませんが、歯科医院ではホワイトニング、インプラント、審美、矯正など多岐にわたるメニューを提供する事が出来ます。診療報酬のように価格が決まっているわけでは無く、先生の技術力やその他のサービスや補償をつけることで価格は自由に設定することが出来ます。自費診療は国の診療報酬に比べて利益率が高く設定されているので、自費の収入を得る事で歯科医院の経営は安定します。以前はインプラントが自費と言えば主役級の存在でしたが、ある程度インプラント需要が落ち着いてきたのとトラブルが増えた事もあり、最近ではお手軽に出来るマウスピース矯正が拡大しております、ただトラブルも増えているようです。
予防歯科の概念が浸透してきた
今でこそ歯科医院は予防で通うのが当たり前になりましたが、以前は痛くなったり、かけたり、取れたりしないとなかなか足が遠くなる存在でした。歯周病予防や虫歯予防の大切さの認知が広がったことで定期的に歯科医院に通う人たちが増加しました。国も予防を推奨する診療報酬の改定をしているところも大きいです。定期検診はいわゆるサブスクリプションになるので収入を安定、雇用も計算がしやすくなります。
歯医者が倒産するケースは、分院展開をしすぎて負債が増えたり、院長が病気になったり、継承者がいなかったり、不正請求が発覚したりする場合です。しかし、これらのケースは比較的少なく、歯医者は地域に密着してかかりつけ医になることで倒産を防ぐことができます。
医療の産業化について
2025年問題でも言われているように、日本はもう増大化する高齢者の社会保障費を支えることが困難になって来ています。国民皆保険制度は誰でも気軽に医療にかかれる優れた制度ですが、税金を使わない自費診療と保険会社の公的保険を組み合わせたやり方で、国民全体で支える負担から産業へシフトすることで成長産業にすることが出来ます。
今現在行われている医療制度は税金を多額に投入してだれでも平等に受けることが出来ますが、病気に罹らないで殆ど医療費を使わない人達が、慢性化した疾患でエンドレスに通院して薬を貰う人たちの医療費を支える不公平なものです。
また経験豊かな技術力のある先生も新卒の研修医上がりの先生のどちらが診療しても点数は同じなので歯科で行っている自費診療は理にかなったものとも言えます。
自費と保険の混合診療を拡大して徐々に産業化へのシフトをしていくのが良いと思います。
産業化のメリットとデメリット
医療の産業化とは、医療を市場の原理に基づいて提供することです。医療の産業化には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
医療の質が向上する
医療の産業化により、医療提供者は競争力を高めるために、技術やサービスの改善に努めることになります。また、医療の透明性や評価制度も導入されることで、医療の質が客観的に判断されるようになります。
医療の選択肢が増える
医療の産業化により、医療提供者は患者のニーズに応えるために、多様な医療を提供することになります。例えば、美容や予防、代替医療などの自費診療が増えることで、患者は自分に合った医療を選ぶことができます。
医療のコストが抑制される
医療の産業化により、医療提供者は競争力を高めるために、効率や創意工夫によってコストを削減することになります。また、医療の需要と供給のバランスがとれることで、医療の価格が適正になります。
デメリット
医療の格差が拡大する
医療の産業化により、医療提供者は利益を追求するために、高額な自費診療や都市部の需要の高い医療に集中することになります。その結果、低所得者や地方の人々は、必要な医療を受けられなくなる可能性があります。
医療の倫理が失われる
医療の産業化により、医療提供者は患者の利益よりも自分の利益を優先することになります。その結果、不必要な医療や不適切な医療が行われる可能性があります。また、医療の人間性や信頼関係が損なわれる可能性もあります。
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