サランラップは現在、食品の保存や冷凍によく使われるラップフィルムですが、もともとは軍事用に開発された合成樹脂でした。その歴史や商品名の由来には、興味深いエピソードがあります。
サランラップの元祖は戦争に活躍した合成樹脂
サランラップの原料となった合成樹脂は、20世紀初頭にアメリカで研究されていました。その成果がポリ塩化ビニリデンという物質で、これがサランラップの元祖です。この物質は、第二次世界大戦中にアメリカ軍によって様々な用途に使われました。例えば、熱帯雨林での行軍時には靴の中敷きとして足を濡れや水虫から守りました。太平洋戦線では、蚊から兵士を守るための蚊帳として使われました。また、銃や弾丸を湿気から守るために包装フィルムとして使われました。このように、サランラップの元祖は、戦争において重要な役割を果たしていたのです。
サランラップの誕生はピクニックから始まった
戦争が終わると、ポリ塩化ビニリデンは食品保存用に改良されましたが、当初はナチュラルチーズの包装にしか使われませんでした。しかし、1940年代後半に、偶然の出来事がサランラップの誕生を促しました。そのきっかけは、ポリ塩化ビニリデンの製造メーカーに勤めていたラドウィックとアイアンズという二人の男性が、妻と一緒に近所の人々とピクニックに出かけたことでした。そのとき、ラドウィックの妻がレタスをポリ塩化ビニリデンで包んで持ってきたのですが、それが他の人たちの目に留まりました。皆が「このラップはとてもきれいだ。どこで手に入れたのか?私も欲しい。どこで売っているのか?」と興味を示したのです。ラドウィックとアイアンズはこの反応に驚き、翌日に上司に報告しました。そして、二人はクリング・ラップ・カンパニーを設立して、食品保存用のラップフィルムの開発に取り組みました。そして、完成した製品には、二人の妻の名前からとった「サランラップ」という名前が付けられました。
サランラップの普及は日本では遅れた
サランラップは、1952年にダウケミカル社が生産を担当し、全米に進出しました。日本では、同年に旭化成とダウケミカル社との提携により、旭ダウ株式会社が設立されました。そして、1960年にサランラップが発売されました。しかし、日本での発売当初は、売れ行きが伸び悩んでいました。その理由は、日本の台所事情とサランラップの特性が合わなかったからです。当時の日本では、冷蔵庫やレンジなどの台所製品がまだ普及しておらず、食品の保存方法も違っていました。サランラップは、冷蔵庫やレンジでの使用に適していましたが、日本の主婦たちは、何に使うものかわからなかったのです。当時の日本の冷蔵庫普及率は10%でした。そこで、サランラップのメーカーは、広告や宣伝で用途や使い方を啓蒙することに努めました。特に、当時台頭してきたスーパーでの販売を積極的に行いました。その結果、徐々にサランラップの便利さが認知され、日本でも普及するようになりました。
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