アジア王者として3度目の出場となるFIFAクラブワールドカップに挑む浦和レッズ。過酷だった2023シーズンをいい形で締めくくることはできるのか。15日に行われる準々決勝では、北中米カリブ海代表のメキシコの強豪クラブ・レオンと対戦する。この一戦に勝てば、準決勝で欧州王者のマンチェスター・シティとの歴史的な対決が待っている。日本代表MFの伊藤敦樹は「本当に特別な大会で、簡単に出られる大会ではない。今まで積み上げたところ、成長したところだったり、全てを出したい」と語る。3年間の集大成となるクラブワールドカップで、浦和レッズは世界にどんな戦いを見せるのだろうか。
負けたら1試合で帰国。3年間の集大成
浦和レッズはアジア王者として2007年、2017年以来、3度目のFIFAクラブワールドカップに挑む。サウジアラビアのジッダが会場となる今大会、浦和レッズは準々決勝のクラブ・レオン戦からの登場となるが、過去の大会と違うのは5位決定戦が存在しない。つまり、北中米カリブ海王者に敗れれば、1試合で日本に帰らないといけないのだ。
ここまで57試合を戦ってきた浦和にとって、3試合増えれば年間60試合となる。アジア王者として世界に挑める貴重な機会であり、何より日本から彼らを送り出した浦和サポーターの思いも背負っている。また現役引退を表明したホセ・カンテや退任が決まっているマチェイ・スコルジャ監督にとっても、浦和で戦う最後のステージとなる。
クラブ・レオンとはどんなチームなのか
伊藤も「本当に初戦のことだけに集中している。今はクラブ・レオンに向かっていきたい。強いと思いますし、自分の中では勝手にアル・ヒラルと戦うぐらい(だと思っている)。みんなもそういうモチベーションでいる」と準々決勝に集中することを強調する。その伊藤が出したサウジアラビアのアル・ヒラルはこれまで何度も浦和とACLの覇権をかけて戦ってきたアジア最強のライバルであり、今年5月のACLファイナルでも壮絶な戦いの末に、浦和が優勝を掴み取った相手でもある。
世界に挑むにあたり、そうした明確な指標を持っていることは浦和の強みだ。試合の強度という意味では伊藤の言う通り、かなり参考になる。ただし、もちろんアル・ヒラルとクラブ・レオンではスタイルもタレントの特長も全く異なり、注意するべきポイントも違う。メキシコリーグはいわゆる秋春制だが、1シーズン2期制を採用しており、半年ごとにリーグ戦にプラスして「リギージャ」と呼ばれるリーグ戦の上位8クラブによるトーナメントで王者が決まる。
クラブ・レオンは21/22前期リーグの準優勝チームとして2022/23シーズンのCONCACAFチャンピオンズリーグに挑み、今年6月に北中米カリブ海王者となった。なお2023/24前期リーグでは8位でリギージャに進んだが、ホーム&アウェイで行われた準々決勝で、クラブ・アメリカに2戦合計スコア2-4で敗れてシーズンを終えている。ただ、クラブ・アメリカとの第2レグが12月3日に行われたので、そこから中2週間弱で浦和戦という流れはクラブ・レオンにとって理想的かもしれない。
浦和レッズが警戒すべき「危険な右サイド」
ディフェンスはクラブ・アメリカとの2試合で5バックを採用していたが、レギュラーシーズンは4バックの試合も多く、浦和戦でどう来るかは分からない。
確かなのはボールを奪って縦に素早くつないで来るスタイルとウルグアイ代表FWフェデリコ・ビニャスの存在だ。2トップであれば左利きのウルグアイ人FWニコラス・ロペスか俊敏なアルフォンソ・アルバラードがビニャスの相棒になり、ビニャスに良い形で持たれると非常に危険だ。浦和としてはアレクサンダー・ショルツとマリウス・ホイブラーテンのコンビがいかに封じるかが鍵を握るが、中盤の伊藤や岩尾憲が、パスの出所にも厳しくチェックしていきたい。
もう一人、攻撃で危険なのが右サイドバックのイバン・モレーノ。DF登録の選手ではあるが、非常に攻撃的で、前向きにどんどん仕掛けてくる。縦に仕掛けてからのクロスはもちろん、ややワイドな位置から狙ってくるミドルシュートも正確だ。見方を変えれば、彼が攻め上がってきた背後というのはかなりスペースが空くので、浦和としては狙い目でもある。通常なら4-2-3-1の左サイドハーフは小泉佳穂だが、飛び出し能力のあるFW髙橋利樹、左サイドバックも予想される明本考浩を1つ前で起用しても面白い。
クラブ・レオンのディフェンスはコロンビア代表のウィリアム・テシージョを筆頭に屈強だが、4バックにしても3バックにしても、ボールを奪いにくる傾向が強い。前に圧力をかけてくる分、一瞬ラインにギャップが生じやすいのだ。
浦和はこのクラブワールドカップが現役最後のステージとなるFWホセ・カンテの決定力に期待したいが、2列目の選手がどうチャンスを作り出していくか。中島翔哉あるいはタイ代表のMFエカニット・パンヤがキーマンになるか。
途中から出てくるFWにも要注意!
一発勝負なので、どちらにしても総力戦になってくるはず。クラブ・レオンもビニャスというエースはいるが、ベンチにもアタッカーは豊富で、アルゼンチン人のニコラス・ラルカモン監督は後半途中からどんどん攻撃的なカードを切ってくる。186cmのブライアン・ルビオ、U-20メキシコ代表ウインガーのブライアン・ルビオなどに要注意だ。
レオンに勝利できれば準決勝に進出し、中4日で欧州王者マンチェスター・シティと対戦することになる。ノルウェー代表FWアーリング・ハーランドなど、世界的なビッグスター集団、しかも名将ジョゼップ・グアルディオラが率いるチームに、アジア王者として浦和が挑むというのはそれだけでもワクワクするが、総合力で不利なのは確かだろう。ただ、環境に慣れている強みもある。やはり相手が試運転でくると見られる早い時間帯にサプライズを起こして、慌てさせる展開に持って行きたい。
反対側の山では12日に1回戦が行われており、開催国サウジアラビアのアル・イテハドがオセアニア王者にオークランド・シティに3-0と完勝。フランス代表のエンゴロ・カンテとカリム・ベンゼマがゴールをあげた。そのアル・イテハドは浦和より1日遅く、アフリカ王者であるエジプトのアル・アハリと対戦する。その勝者が南米王者のフルミネンセに挑むが、タレント軍団のアル・イテハドが地の利も生かして、決勝に進む可能性は決して小さくないだろう。
モロッコで行われた前回大会ではアジア王者アル・ヒラルがブラジルのフラメンゴを3-2で破り、欧州王者レアル・マドリードと決勝で戦った。結果は5-3でレアルの優勝に終わったが、中東、特にサウジアラビアが莫大な資金力をサッカーに投じて来たことで、世界のパワーバランスが変わりつつある。その中で、アル・ヒラルを破ってアジア王者になった浦和がまずはクラブ・レオンに勝利し、さらに欧州王者を相手にサプライズを巻き起こせるか。
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