A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは？

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、多様な臨床症状を引き起こすグラム陽性菌による感染症です。この菌は、急性咽頭炎や膿痂疹、蜂巣織炎、猩紅熱など、さまざまな疾患の原因となります。また、免疫学的機序を介してリウマチ熱や急性糸球体腎炎を引き起こすことも知られています。

A群溶血性レンサ球菌感染症は温帯地域で普遍的に見られ、亜熱帯地域でも発生しますが、熱帯地域では珍しい疾患です。学童期の小児に最も多く見られ、冬季および春から初夏にかけての報告数のピークがあります。感染は通常、患者との接触を介して伝播し、家庭や学校などの集団での感染が多いです。

A群溶血性レンサ球菌は、Lancefield A〜V群に分類されるグラム陽性球菌で、β溶血を引き起こします。この菌はM蛋白とT蛋白を細胞表層に持ち、これらの抗原性によりさらに型別分類されます。溶血毒素や発熱毒素など、多くの活性蛋白物質を産生し、様々な症状を引き起こします。

潜伏期は2〜5日で、発症は突然の発熱と全身倦怠感、咽頭痛で始まります。猩紅熱の場合、発熱後12〜24時間で皮疹が出現します。合併症としては、肺炎や髄膜炎などの化膿性疾患やリウマチ熱、急性糸球体腎炎などの非化膿性疾患があります。

咽頭培養による菌の分離が基本で、迅速診断キットも利用可能です。血清学的には抗streptolysin-O抗体や抗streptokinase抗体の上昇を見る方法が診断の参考になります。

治療にはペニシリン系薬剤が第1選択で、アレルギーがある場合はエリスロマイシンやセフェム剤が使用されます。予防としては、患者との濃厚接触を避け、うがいや手洗いなどの一般的な予防法を励行します。集団発生時には接触者の咽頭培養を行い、陽性であれば治療を行います。