クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)と牛海綿状脳症(BSE)

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クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)と牛海綿状脳症(BSE)

プリオン病とは、蛋白質性感染粒子(prion)と呼ばれる異常な蛋白質が脳組織に蓄積し、海綿(スポンジ)状に変性させる致死性の神経疾患である。プリオン病はヒトだけでなく、牛や羊、シカなどの動物にも感染することが知られている。プリオン病の代表的な例として、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)や牛海綿状脳症(BSE)が挙げられる。プリオン病は核酸を含まない感染性病原体であることや、正常なプリオン蛋白の構造変換によって伝達性や蛋白分解酵素耐性を獲得することなど、その発症機構は未だに謎に包まれている。

プリオン病の種類と歴史

プリオン病は、ヒトと動物の両方に発症する可能性がある。ヒトのプリオン病には、弧発性、家族性、感染性の3つのタイプがある。弧発性は原因不明で突然発症するもので、ヒトプリオン病の大半を占める。家族性はプリオン遺伝子に変異を持つことで発症するもので、遺伝性CJDや致死性家族性不眠症などがある。感染性はプリオンに感染することで発症するもので、クールー病や新型CJDなどがある。クールー病は、ニューギニアのFore族が人肉を食べる習慣によって感染したと考えられる病気で、1966年にGadjusekらがチンパンジーへの感染実験に成功し、1976年にノーベル賞を受賞した。新型CJDは、1996年に英国で発表された病気で、BSEに感染した牛肉を食べることで感染したと考えられる。プリオン病の名称は、1920年代にドイツの神経病理学者CreutzfeldtとJakobによって初めて報告されたCJDに由来する。

動物のプリオン病には、羊のスクレイピー、シカの慢性消耗病、ミンクの伝達性脳症、BSE、ネコの海綿状脳症などがある。スクレイピーは、18世紀にはすでに知られていた羊のプリオン病で、痒みを感じて体をこすりつけることからその名がついた。BSEは、1987年に発表された牛のプリオン病で、牛の骨や脳などを含む餌を与えることで感染したと考えられる。BSEは、ヒトに新型CJDを引き起こす可能性があることから、世界的な問題となった。ネコの海綿状脳症は、BSEに感染した牛肉を食べたネコやチータなどのネコ科の動物に発症するプリオン病である。

プリオン病の特徴と機構

プリオン病の特徴は、脳組織の海綿状変性である。海綿状変性とは、脳組織に空洞ができることで、脳が海綿のようになる現象である。海綿状変性は、プリオンと呼ばれる異常な蛋白質が脳組織に蓄積し、神経細胞を死滅させることで起こる。プリオンは、正常なプリオン蛋白の構造が変化したもので、核酸を含まない感染性病原体である。プリオンは、米国のPrusiner博士によって1982年に提唱された概念で、1997年にノーベル賞を受賞した。

プリオン病の発症機構は、正常なプリオン蛋白が異常なプリオン蛋白に変換されることで説明される。プリオン蛋白は、細胞膜に存在する蛋白質で、正常型(PrPC)と異常型(PrPSc)に分けられる。PrPCは、らせん状の構造(αへリックス)を多く持つが、PrPScは、板状の構造(βシート)を多く持つ。この構造の違いによって、PrPScは、伝達性や蛋白分解酵素耐性を獲得する。伝達性とは、PrPScがPrPCに作用して、PrPCをPrPScに変換する能力のことである。蛋白分解酵素耐性とは、PrPScが蛋白分解酵素によって分解されにくい性質のことである。これらの性質によって、PrPScは脳組織に蓄積し、海綿状変性を引き起こす。プリオン蛋白の変換機構や伝達機構は、まだ完全には解明されていないが、種々の宿主因子や分子間相互作用が関与していると考えられている。

プリオン病の概要と診断・治療法

プリオン病は、脳に異常なタンパク質(プリオン)が蓄積し、神経細胞が壊死することで起こる難病です。ヒトだけでなく、牛やヒツジなどの動物にも発生します。プリオン病には、孤発性、遺伝性、獲得性の3つのタイプがあり、それぞれ原因や症状が異なります。プリオン病の代表的なものに、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)があります。CJDは、急速に進行する認知症やミオクローヌス(不随意運動)などを引き起こし、発症後数ヶ月から数年で死亡します。CJDの発病率は、人口100万人あたり約1人と非常にまれですが、世界中で報告されています。

プリオン病の診断は、脳波検査、脳MRI検査、脳脊髄液検査、遺伝子検査などを行いますが、確定診断には、患者の死後に脳組織を検査する必要があります。プリオン病の治療法は現在開発されておらず、対症療法や支持療法が行われます。プリオン病の予防には、感染源となる可能性のある組織や器具の適切な処理や廃棄、感染地域の食肉の摂取の回避などが重要です。プリオン病は、一般的な接触や空気感染などでは感染しませんが、献血はできません。また、医療機関を受診する際には、プリオン病と診断されていることを医療機関に伝える必要があります。プリオン病は、現在も研究が進められている未解明の病気ですが、患者や家族のための支援団体や情報提供サイトなどもあります

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