なぜ自分で自分をくすぐれないのか？
人間は自分で自分をくすぐってもくすぐったく感じません。これは、脳が自分の手の動きを予測して、くすぐりの刺激を抑制するからです。一方、人にくすぐられるときは、予測できない刺激に反応してくすぐったさを感じます。
くすぐりの感覚は心理的要因にも左右される
くすぐりの感覚は、相手との親密度や受容する心にも影響されます。親しい人や好きな人にくすぐられると、楽しさや快楽が加わって、よりくすぐったく感じます。逆に、知らない人や嫌いな人にくすぐられると、くすぐったさは減少します。
脳科学が解き明かすくすぐりの謎
古代ギリシャの哲学者アリストテレスも、自分で自分をくすぐれない理由や、くすぐりを予期するときの心理状態について問題提起しましたが、答えを見つけることはできませんでした。しかし、近年の脳科学の発展により、くすぐりのメカニズムが次第に明らかになってきました。
たとえば、自分で自分をくすぐることができないのは、脳内の体の感覚を司る領域（大脳の体性感覚皮質）が、自分の手の動きを予測して、くすぐり反応をキャンセルするからです。この領域は、人間だけでなく、ラットやイルカなどの動物にも存在し、くすぐりを検知して笑い声などの反応を起こします。しかし、セルフタッチによってこの領域の活動が抑えられるため、自分で自分をくすぐってもくすぐったくなりません。
また、他人にくすぐられているときに、さらに自分で自分をくすぐると、くすぐったさが低下することもわかっています。これは、自分自身のくすぐりによって、くすぐり反応を起こす脳領域が抑制されるからです。もし、くすぐりの刑に処されることがあったら、自分で自分をくすぐることが助かるかもしれません。
くすぐりの不思議なメカニズムについて、脳科学の知見をもとに紹介しました。くすぐりは、予測できない刺激と心理的要因によって感じる感覚であり、脳の特定の領域が関与しています。自分で自分をくすぐっても何も感じないのは、脳が自分の手の動きを予測して、くすぐり反応を抑制するからです。
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