ブロガーと個人事業税

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ブロガーと個人事業税

ブログで一定以上の収入を得ていると、確定申告をする必要が出てきます。

そして、所得が290万円を超えると「所得税」とは別に「個人事業税」というものがかかります。

これが実に厄介。
業種によって税率が違うんです。

区分税率事業の種類
第1種事業
(37業種)
5%物品販売業運送取扱業料理店業遊覧所業
保険業船舶定係場業飲食店業商品取引業
金銭貸付業倉庫業周旋業不動産売買業
物品貸付業駐車場業代理業広告業
不動産貸付業請負業仲立業興信所業
製造業印刷業問屋業案内業
電気供給業出版業両替業冠婚葬祭業
土石採取業写真業公衆浴場業(むし風呂等)
電気通信事業席貸業演劇興行業
運送業旅館業遊技場業
第2種事業
(3業種)
4%畜産業水産業薪炭製造業
第3種事業
(30業種)
5%医業公証人業設計監督者業公衆浴場業(銭湯)
歯科医業弁理士業不動産鑑定業歯科衛生士業
薬剤師業税理士業デザイン業歯科技工士業
獣医業公認会計士業諸芸師匠業測量士業
弁護士業計理士業理容業土地家屋調査士業
司法書士業社会保険労務士業美容業海事代理士業
行政書士業コンサルタント業クリーニング業印刷製版業
3%あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復
その他の医業に類する事業
装蹄師業

法定業種と税率というのが決まっていて、70種類の業種があります。
税率は3%~5%です。

しかし、この法定業種70種のどれにも当てはまらない業種は税率が0%、個人事業税がかかりません。

たとえば、「小説家」「画家」「スポーツ選手」のような職業は法定業種70種に分類されません。
個人事業税の対象外となります。

「ブロガー」や「Youtuber」のような新しい職業も、当然ながら法定業種には規定がありません。
そのため、単純に考えれば税率は0%になるはずです。

ところが、油断していると適当な法定業種70種のどれかに分類され、個人事業税を徴収されてしまうことがあります。

ちなみに「所得税」は国の管轄ですが、「個人事業税」は都道府県の管轄です。
都道府県によって基準が違ったり、担当者によって基準が違ったりすることがあります。

「ブロガー」が分類されやすい業種としては以下のようなものがあります。

  • 広告業
  • デザイン業
  • 仲立業
  • 請負業

ブロガーは広告業?

「確定申告書」「開業届」「青色申告承認申請書」などの職業欄に「ブロガー」と書いた場合は、おそらく「ブロガーって何ですか?具体的な業務内容を教えてください」と役所から問い合わせがあります。

そこで、「ブログに広告を表示してそれを読者がクリックするとお金が入ってくる」のような説明をしてしまうと、「ブロガー」という職業を「広告業」に分類されることがあります。
広告料収入を得ているので「広告業」にしてしまえというわけです。

「広告業」は個人事業税の税率が5%です。

はたしてブロガーを「広告業」に分類するのは本当に正しいのでしょうか?

日本標準産業分類

総務省の「日本標準産業分類(平成25年10月改定)」には以下のような記載があります。

広告業

主として依頼人のために,広告に係る企画立案,マーケティング,コンテンツの作成,広告媒体の選択等,総合的なサービスを提供する事業所,新聞,雑誌,ラジオ,テレビ,インターネットその他の広告媒体のスペース又は時間を当該広告媒体企業と契約し,依頼人のために広告する事業所をいう。
広告文案の作成,商業美術などの業務を行うが,広告媒体に広告しない事業所は大分類G-情報通信業[4151]に分類される。

○広告業;総合広告業;広告代理業;新聞広告代理業;インターネット広告業;屋外広告業(総合的なサービスを提供するもの);車内広告業(総合的なサービスを提供するもの);電柱広告業(総合的なサービスを提供するもの)

×テレビコマーシャル制作業[4112];ラジオスポット制作業[4122];広告制作業[4151];コピーライター業[7299];デザイン業[7261];新聞業[4131];出版業[4141];放送業[38];印刷業[151];サンプル配布業[9299];ポスティング業[9299];ちんどん屋[9299];看板設置業[07];電飾看板設置業[0812]

日本標準産業分類(平成25年10月改定)
https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/02toukatsu01_03000044.html#l
https://www.soumu.go.jp/main_content/000290731.pdf

広告業とは、広告を企画し、広告を作成し、広告媒体の選択をし、広告媒体企業と契約し、依頼人のために広告する事業所をいいます。

電通のような、上流から下流まで広告のすべてをプロデュースする、いわゆる「広告代理店」のようなものをさしていることが分かります。

この定義にあてはめると、ブロガーは広告業ではないといえます。

事業税逐条解説

自治省作成の「事業税逐条解説」には以下のような記載があります。

広告業とは、対価の収得を目的として、他人の依頼により、広告を請け負う事業をいう

「他人の依頼により」とありますが、Google AdSense の場合、誰かに依頼されて広告を請け負っているわけではありません。

ブログ側では枠を作るだけ。
そこに何を表示するかはGoogle側が勝手に決めています。
記事の内容によっては何の広告も表示されないこともあります。

「他人の依頼により、広告を請け負う事業」とみなすのは妥当ではありません。

また、自分のブログに「広告」が表示されただけでは、収益が発生しません。
読者が広告をクリックして、別のサイトに移動した時に収益が発生します。

つまり、「広告を表示する」という行為そのものに対して「対価」が支払われているわけではありません。

テレビ局は放送事業者

民放のテレビ局はコマーシャル(広告)を流すことで収入を得ていますが、広告業とはみなされていません。
放送法によるとテレビ局は放送事業者にあたります。

また、NHKは広告が禁止されていますが、受信料を徴収することで収益を得ています。
NHKも放送事業者です。

つまり、公共の電波を使って放送を行うという行為をもって放送業と認定されていることになります。
(ケーブルテレビなど公共の電波を使わない場合も放送業になりますが、細かい説明は割愛)

視聴者から直接金銭を徴収(NHK)するか、広告により収益を得る(民放)かといったマネタイズの手法は業種とは直接関係しないことがわかります。

雑誌にも広告が掲載されていて広告料収入を得ていますが、雑誌の運営元は業種でいうと出版業です。
電車の車両内には中吊り広告がありますが、電車を運営している会社は業種でいうと鉄道業です。

スポーツ選手などもユニフォームやシューズにロゴ(広告)を載せることで収入を得ていますが、広告業にはあたりません。

広告収入を得たからといって、広告業に分類されるわけではないことが分かります。

ブログの場合は、文章を書くこと(記事を作成すること)が主たる業務となるため、文筆業に分類するのが妥当でしょう。

ブログ上にアフィリエイトを掲載することは、テレビでCMが流れるのと類似の行為だと考えられます。
そのため、テレビ局が広告業と認知されていないのと同様に、ブログの運営も広告業にはあたらないでしょう。

事例紹介

○○県の場合(2016年)、ブロガーは法定業種外(非課税)

ソフトウェア開発者でブログもやっている方の話です。

「お前は広告業だ。個人事業税を払え」と県税事務所から通知が届きます。

この方は、これを不審に思い審査請求を行いました。
すると、個人事業税減額決定通知書というものが届き税額が0円になります。

その後、審査請求を取り下げたとのことなので、実際の審査に行く前の段階で県税事務所側が間違いを認め、自主的にごめんなさいをしたということですね。

「県税事務所」ということなので、「都道府」以外の43県の内のどこかにお住まいの方の話ですね。

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長野県の場合(2017年)、ブロガーは仲立業(課税)

コンサルとブログをやっている人の事例。

2016年、コンサルの部分は「コンサルタント業」として個人事業税の課税対象になったが、ブログ部分については法定業種にないので非課税になる。

2017年、ブログ部分についてもやっぱり課税するという通知が届く。
業種は「仲立業」として。

この方は審査請求等は行わなかったようです。

長野県にお住まいのかたです。

https://free-challenge.com/otazune
https://free-challenge.com/netbusiness-zeikin

大阪府の場合(2018年)、ブロガーは広告業(課税)

大阪府のブロガーの事例。

アドセンスの収入が「広告業」と分類され「個人事業税」を課されます。

審査請求をして大阪府と争いましたが、請求は棄却され、結局は課税されてしまったようです。

ちなみに、大阪府では「ブロガーは広告業」という内部マニュアルがあるようです。
大阪府が出した決定を、大阪府が審査するので、当然ながら大阪府に有利な判定がされた可能性は高いです。

後で詳しく解説しますが、ブロガーを広告業と判断することについて、法的根拠は薄いです。
裁判まで行けば決定を覆せる可能性は十分あります。

都道府県によって対応が異なる

これまでの事例紹介からも分かるように、ブロガーは個人事業税を課税されたり、課税されなかったり。
課税されたとしてもどの業種となるのか、その名目はばらばら。

「個人事業税」は都道府県の管轄です。
そのため、どのように判断するかは都道府県と担当者のさじ加減次第です。

最近は、「ブロガー」「Youtuber」などの職業が認知され始めて、自治体ごとに内部マニュアルが用意されていることがあります。
あなたがお住まいの自治体で、マニュアルに「ブロガーは広告業とする」と書かれていた場合は、基本的に抗議しても徒労に終わる可能性が高いでしょう。

それでも抗議の声をあげ、なぜその業種と判断されたのか具体的な根拠の提示を求めることは重要です。
それらの情報を共有し、ブロガーの立ち位置について全国共通の認識を作り上げていく必要があると思います。

大阪府の事例をもっと詳しく

大阪府の個人事業主(ブロガー)が「広告業」として「個人事業税」を課されます。
このブロガーさんは、これを不服として審査請求を行いましたが、大阪府行政不服審査会によって請求を棄却されています。
(結局は広告業とみなされました)

資料に目を通しましたが、請求を棄却する法的根拠は薄く、横暴な判定だと思います。

以下に詳しく見ていきます。

「広告を請け負う事業」とみなすのは妥当か?

審査請求人は、自らが管理するホームページの一部を広告表示が行われる媒体としてA社へ提供し、当該広告媒体に表示された広告をホームページの閲覧者がクリックする回数等に応じて報酬を受け取っているので、対価の取得を目的とした行為を行っている。

広告主と審査請求人との間に直接契約関係はなく、A社が請け負った広告業務について、その一部をA社の依頼により審査請求人が請け負って広告を表示し、報酬を得ている。
以上より、審査請求人は、対価の収得を目的に事業を行っており、A社の依頼によりA社の行う広告業務の一部を請け負っていることから、逐条解説で広告業の定義とされている「対価の収得を目的として、他人の依頼により、広告を請け負う事業」を審査請求人が行っていることになり、本件事業は広告業と認められる。

大阪府行政不服審査会の答申の状況(平成30年度)
答申第6号「個人事業税賦課決定処分取消請求」(答申日:平成30年7月13日)
http://www.pref.osaka.lg.jp/houbun/fufukusinsakai/tousin_zyokyo_30.html

上記ではA社と書かれていますが、Googleのことだと思って読みましょう。
審査請求人とは、訴えを起こしたブロガーさんのことです。

「広告主と審査請求人との間に直接契約関係はなく」

広告主との直接的な契約関係がないのに、ブロガーが広告を請け負ったことになるという判断には疑問です。

「A社の依頼により審査請求人が請け負って広告を表示」

A社(Google)から「広告を掲載して欲しいんですが」とブロガーに対して依頼があったわけではないはずです。
これを「A社からの依頼により請け負った」とみなすのは妥当ではありません。

「他人の依頼により、広告を請け負う事業」

広告をブログ上に表示することを「広告を請け負う事業」とみなすのは妥当なのでしょうか?

請負の定義

請負とは「業務の完了」を「約束」し、業務の完了と「引き換え」に「対価」を受け取ることをいいます。

ブログへの「広告の設置」を業務とみなした場合はどうなるでしょうか。

請負契約だとすると「広告設置の完了」をもって対価が支払われる必要があります。
Googleアドセンスの場合、「広告を設置」した時点では一切の収益が発生しません。
そのため、「広告の設置」は「請負業務」とみなすことはできません。

では、「広告が表示されること・広告がクリックされること」を業務とみなした場合はどうなるでしょうか。

ブログに記事を書き、広告を設置した時点では、実際にブログが読まれるかどうかは分かりません。
そのため、ブログ運営者が「広告が表示されること」ましてや「広告がクリックされること」を約束することはできません。
つまり、「業務の完了」を「約束」できないため、業務の「請負」とみなすことはできません。

これらのことから、ブロガーを「他人の依頼により、広告を請け負う事業」とみなすのは妥当ではありません。

また、「日本標準産業分類」では、広告の企画・製作・媒体の斡旋等の総合的な業務を「広告業」だとみなしています。
「広告媒体(広告を表示すること)」そのものを「広告業」とみなすのは合理的ではないでしょう。

日本標準産業分類を無視するのは妥当か?

名古屋高裁判決は、消費税の簡易課税制度におけるみなし仕入率の適用にあたり、歯科技工業が消費税法施行令第57条第5項第3号に定める第三種事業の製造業に該当するのか、同項第4号ハに定める第五種事業のサービス業に該当するのか争った事例において、課税庁が歯科技工業をサービス業と判断した根拠となった消費税法基本通達が、サービス業の範囲を概ね日本標準産業分類に求めていたことにつき、その規定の合理性を否定しなかったという判例であって、個人事業税の業種の定義についての法令の解釈を示したものではなく、個人事業税の業種の定義を日本標準産業分類に求めることの妥当性について、何らかの判断を示したものでもない。そのため、少なくとも名古屋高裁判決からは、日本標準産業分類による定義を個人事業税の業種の認定に用いるべきであるとは言えない。

大阪府行政不服審査会の答申の状況(平成30年度)
答申第6号「個人事業税賦課決定処分取消請求」(答申日:平成30年7月13日)
http://www.pref.osaka.lg.jp/houbun/fufukusinsakai/tousin_zyokyo_30.html

「名古屋高裁で『消費税』の業種判定に『日本標準産業分類』を使用した判例があるが、『個人事業税』の業種判定に用いるべきとは言えない」という趣旨のことを大阪府行政不服審査会が答えています。

この判断には疑問です。
「消費税の業種判定には採用するけど、個人事業税の業種判定には採用しない」というのでは一貫性にかけます。

また、大阪府行政不服審査会は「個人事業税の業種の認定に用いるべきであるとは言えない」と言っていますが、「個人事業税の業種の認定に用いてはいけない」という根拠もありません。
大阪府は、総務省が作成した『日本標準産業分類』を業種認定に採用しない合理的な根拠を提示すべきだと思います。

大阪府の内部マニュアルは妥当か?

個人事業税業種認定マニュアル(大阪府内規)(抜粋)

第34 広告業

1 定義

広告業とは、対価の収得を目的として、他人の依頼に応じて広告を請け負う事業、広告に係る総合的なサービスを提供する事業及び広告するための広告媒体のスペース又は時間を提供する事業をいう。

大阪府行政不服審査会の答申の状況(平成30年度)
答申第6号「個人事業税賦課決定処分取消請求」(答申日:平成30年7月13日)
http://www.pref.osaka.lg.jp/houbun/fufukusinsakai/tousin_zyokyo_30.html

大阪府の内規では「広告媒体のスペース又は時間を提供する事業」を「広告業」とみなしているようです。

結局は、大阪府が内部マニュアルで「広告業」とみなし、大阪府行政不服審査会がマニュアルにもとづいて「審査」をするので、大阪府のマニュアルに沿った判決しか出てきません。

本来の広告業の定義は
「広告に係る総合的なサービスを提供する事業」
であり、

大阪府の広告業の定義である
「広告に係る総合的なサービスを提供する事業及び広告するための広告媒体のスペース又は時間を提供する事業」
というのは拡大解釈です。
法令にはそのような記述は一切ありません。

マニュアルが法的に妥当なものかについては、疑念の余地があります。
これについては裁判で争う必要があるでしょう。

裁判をするメリットは少ない

しかし、この問題に最初に出くわすのは、ようやく所得が290万円を超えた頃。
(個人事業税は290万円を超えた部分にかかります。)

所得が300万円の人だと、広告業に分類されて税率5%がかかったところで、個人事業税は5,000円です。

300万円(所得) - 290万円(個人事業税控除) = 10万円(個人事業税の課税対象)

10万円(個人事業税の課税対象) × 5%(税率) = 5,000円(個人事業税額)

正直、5,000円を取り戻すのために裁判を起こすくらいなら、ブログの運営を頑張った方がいい気がします。

所得が1000万円こ超えるくらいになってくると、5%の個人事業税がかかるかどうかは収益に大きく影響してきます。
しかし、そこへ行くまでに数年はかかるでしょう。
それまでの数年間、5%の個人事業税を取られ続けていた人は、今さら争うのも馬鹿らしくなっているかと思います。

結局、儲かっていない人(所得290万円以下の人)は気にする必要がないし、儲かっている人は5%くらい取られたところで致命的ではない。
そのため、声をあげる人は少なく、「都道府県によって対応が違う」といういい加減な状態が放置されているのだと思います。

マネタイズと業種は別物

15-1-9 令第5条第1項第1号《物品販売業》の物品販売業には、公益法人等が自己の栽培、採取、捕獲、飼育、繁殖、養殖その他これらに類する行為(以下15-1-22において「栽培等」という。)により取得した農産物等(農産物、畜産物、林産物又は水産物をいう。以下15-1-27までにおいて同じ。)をそのまま又は加工を加えた上で直接不特定又は多数の者に販売する行為が含まれるが、当該農産物等(出荷のために最小限必要とされる簡易な加工を加えたものを含む。)を特定の集荷業者等に売り渡すだけの行為は、これに該当しない。(昭56年直法2-16「七」、平24年課法2-17「六」により改正)

国税庁 法令解釈通達 第2款 物品販売業
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/15/15_01_02.htm

法定業種の1つである「物品販売業」の話。

「農家」が収穫物を「特定の集荷業者等に売り渡す」行為は、「物品販売業」にはなりません。
「販売する行為」のみをもって「物品販売業」とは分類されないわけです。

ただし、農家が収穫物を「不特定多数の者に販売」をすると「物品販売業」になります。
農家兼八百屋みたいな感じですかね。

この考え方は何となく分かる気がしますね。
「販売する」=「物品販売業」ではなく、
「不特定多数」に対して「販売する行為」を「業務」として行うと「物品販売業」になる。

「販売」が主たる業務になっているのか、主たる業務(農業)の副作用として「販売」が発生するのかの違いです。

ブロガーが複数の企業からお金をもらってステマをする(商品の宣伝をする)行為を繰り返すと、不特定多数から広告行為を請け負ったとして「広告業」に認定されるかもしれません。

しかし、Googleアドセンスのみの場合は、「農家が特定の集荷業者等に売り渡す行為」に近いものがあると思います。

ちなみに「農業」は法定業種外なので、個人事業税はかかりません。

法律まとめ(個人事業税に関係ありそうなもの)

審査請求をするときには、どこの法律にどのように記載されているのか、事実確認・予習をしたほうがいいでしょう。

以下に関係しそうなところをまとめておきます。

地方税法・地方税法施行令

「広告業」は「第1種事業」というものに分類されています。
そして「第1種事業」には個人事業税を5%課税することになっています。

これは法律でいうと「地方税法 第七十二条」と「地方税法施行令 第十条」に記載があります。

第七十二条の二

(中略)

3 個人の行う事業に対する事業税は、個人の行う第一種事業、第二種事業及び第三種事業に対し、所得を課税標準として事務所又は事業所所在の道府県において、その個人に課する。

(中略)

8 第三項の「第一種事業」とは、次に掲げるものをいう。
一 物品販売業(動植物その他通常物品といわないものの販売業を含む。)
一の二 保険業
二 金銭貸付業
三 物品貸付業(動植物その他通常物品といわないものの貸付業を含む。)
四 不動産貸付業
五 製造業(物品の加工修理業を含む。)
六 電気供給業
七 土石採取業
八 電気通信事業(放送事業を含む。)
九 運送業
十 運送取扱業
十一 船舶定係場業
十二 倉庫業(物品の寄託を受け、これを保管する業を含む。)
十三 駐車場業
十四 請負業
十五 印刷業
十六 出版業
十七 写真業
十八 席貸業
十九 旅館業
二十 料理店業
二十一 飲食店業
二十二 周旋業
二十三 代理業
二十四 仲立業
二十五 問屋業
二十六 両替業
二十七 公衆浴場業(第十項第二十号に掲げるものを除く。)
二十八 演劇興行業
二十九 遊技場業
三十 遊覧所業
三十一 前各号に掲げる事業に類する事業で政令で定めるもの

(中略)

第七十二条の四十九の十七 個人の行う事業に対する事業税の額は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める金額とする。
一 第一種事業を行う個人 所得に百分の五の標準税率によつて定めた率を乗じて得た金額

地方税法 第七十二条
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000226#1856

第十条の三 法第七十二条の二第八項第三十一号に規定する事業で政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 商品取引業
二 不動産売買業
三 広告業
四 興信所業
五 案内業
六 冠婚葬祭業

地方税法施行令 第十条
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325CO0000000245#1121

実は、「地方税法」の中には「広告業」に関する記載がありません。

「地方税法」には、
「三十一 前各号に掲げる事業に類する事業で政令で定めるもの
とあり、
「地方税法施行令 第十条の三」(政令)の方に
「広告業」という記載があります。

ただし、「広告業」が「第一種事業」に分類されていることまでは確認できますが、「広告業とは何か」については一切の記述がありません。

請負とは?(民法)

(請負)
第六百三十二条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

(報酬の支払時期)
第六百三十三条 報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡しを要しないときは、第六百二十四条第一項の規定を準用する。

民法 第六百三十二条
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=129AC0000000089#2307

第六百二十四条 労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。

請負とは、仕事を完成することを約束し、仕事の目的物の引渡し(作業の完了)をもって報酬を受け取ることをいいます。

また、請負人は、発注者に対して、請け負った業務を完成させる義務を負います。
そして、請け負った業務を完了できなかった場合には、損害賠償を請求されることになります。

そのため、請負契約の場合は、期間を定め、「どのような状態を完了とみなすのか」を契約の段階で定義する必要があります。

国税庁 法令解釈通達 個人事業者の納税義務

事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいうから、個人が雇用契約又はこれに準ずる契約に基づき他の者に従属し、かつ、当該他の者の計算により行われる事業に役務を提供する場合は、事業に該当しないのであるから留意する。したがって、出来高払の給与を対価とする役務の提供は事業に該当せず、また、請負による報酬を対価とする役務の提供は事業に該当するが、支払を受けた役務の提供の対価が出来高払の給与であるか請負による報酬であるかの区分については、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価であるかどうかによるのであるから留意する。この場合において、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする。

(1) その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。

(2) 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。

(3) まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。

(4) 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。

国税庁
法令解釈通達
個人事業者の納税義務
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/01/01.htm

「個人事業者」にあたるのか、人に使われているだけになるのか、その判断基準をまとめたもの。

「『雇用契約』がなく『請負契約』になっていた場合でも、発注者側と受注者の間に主従関係がある場合は、実質『雇用』とみなす。その場合は個人事業者として課税はされない」という原則を説明しています。

Googleアドセンスがメインのブロガーの場合は(2)と(4)の項目が影響すると思います。

「(2) 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか」

広告の選定や広告がクリックされた場合の単価の決定などはすべてGoogle AdSenseが行っています。
ブロガーは広告の種類・内容を選択することはできず、価格交渉権なども与えられていません。

そのため、広告に関してブログ運営者は従たる存在に過ぎず、指揮監督権はGoogleにあるといえます。

「(4) 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか」

広告は、「文字」「静止画」「動画」「アニメーション」などの形式でサイト上に表示されます。
「文字」「静止画」「動画」「アニメーション」などの広告素材は、Googleから与えられるものであり、ブログ運営者が自ら作成することはできません。

また、広告を表示するためのコンピュータープログラムもGoogleから与えられたものであり、ブログ運営者が独自に作成することは許可されていません。

つまり、広告に係る材料又は用具等はすべてGoogleから供与されたものであり、ブログ運営者が準備することはありません。

これらの事実により、ブロガーが「広告」を自己の計算において独立して事業として行っているとはいえないでしょう。

事業税逐条解説

広告業とは、対価の収得を目的として、他人の依頼により、広告を請け負う事業をいう

「事業税逐条解説」とは、自治省が作成した資料。
(自治省は、昭和35年(1960年)~平成13年(2001年)に存在した日本の行政機関)

法律の文章からだけでは判断が難しい事柄を細かく解説してあります。
裁判等でも引用される資料です。

書籍として出版されていて5,000円位で買えます。
(もしかして絶版になってる?)
ネットでは原文を見つけられませんでした。
国会図書館等には所蔵されているので、頑張れば閲覧できるはずです。

日本標準産業分類

広告業

主として依頼人のために,広告に係る企画立案,マーケティング,コンテンツの作成,広告媒体の選択等,総合的なサービスを提供する事業所,新聞,雑誌,ラジオ,テレビ,インターネットその他の広告媒体のスペース又は時間を当該広告媒体企業と契約し,依頼人のために広告する事業所をいう。
広告文案の作成,商業美術などの業務を行うが,広告媒体に広告しない事業所は大分類G-情報通信業[4151]に分類される。

○広告業;総合広告業;広告代理業;新聞広告代理業;インターネット広告業;屋外広告業(総合的なサービスを提供するもの);車内広告業(総合的なサービスを提供するもの);電柱広告業(総合的なサービスを提供するもの)

×テレビコマーシャル制作業[4112];ラジオスポット制作業[4122];広告制作業[4151];コピーライター業[7299];デザイン業[7261];新聞業[4131];出版業[4141];放送業[38];印刷業[151];サンプル配布業[9299];ポスティング業[9299];ちんどん屋[9299];看板設置業[07];電飾看板設置業[0812]

総務省 日本標準産業分類(平成25年10月改定)
https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/02toukatsu01_03000044.html#l
https://www.soumu.go.jp/main_content/000290731.pdf

「日本標準産業分類」は総務省が作成したもの。

大阪府の審査請求では「日本標準産業分類」が証拠として却下されていますが、その他の判例では消費税や知的財産権の裁判で引用され、判断の根拠になっています。

判例検索

裁判の過去の判例が検索できる。

裁判例検索 | 裁判所 - Courts in Japan

ブロガーはデザイン業?

WEBサイト(ブログ)の運営をしているんだから、「WEBデザイナー」と書いた方がかっこいい気がします。
しかし、これだと「デザイン業」に分類されてしまい、個人事業税の税率が5%になります。

気を付けましょう。

ブロガーは仲立業?

ブログにAmazonのリンクを貼り、読者が買い物をしてくれると数%のキックバックが発生します。
これが主な収入源になっている人もいるでしょう。

この場合、読者とAmazonの間の商品売買を仲介しているので「仲立業(なかだちぎょう)」に分類される場合があります。
仲立業は税率が5%です。

長野県の事例では、ブログが仲立業に分類されていました。

アドセンスの場合は、バナーがクリックされれば、読者がリンク先で買い物をしたか・契約をしたかに関係なく報酬になります。
そのため、売買の成立(仲立の成立)が対価の条件とはなっていないので、仲立業はちょっと違うかなと思います。

都道府県の担当者は、Googleアドセンス・Amazonアソシエイト・その他アフィリエイトの違いについて、おそらく理解していません。

仲立業の定義をどうみなしているのか担当者に確認しましょう。
Amazonアフィリエイト的なものを想定している場合は、アドセンスメインの人は抗議をしましょう。

ブロガーは請負業?

自分のブログだけでなく、大手メディアなどから依頼を受けて記事を書いている場合、請負業に分類されることもあるそうです。

依頼を受けて、業務を請け負って、納品する。
「作業完了」と「対価の支払い」がセットになっていることが、請負業とみなされる条件です。

「1ヶ月○○円、週に何本記事を書く」みたいな契約の場合は、請負業とはみなされません。

ブロガーは文筆業?

ブロガーは記事を書くのが仕事。
文筆業に分類するのが最も妥当ではないかと思います。

確定申告の書類では職業欄に「文筆業」や「ライター」と書くのが一番わかりやすいかな。

文筆業というのは、小説家・作家といわれるような人たちですね。
ライターというのは、雑誌などに記事を書く人です。

作家やライターは、法定業種にはないので個人事業税の対象外です。

ブロガーはコンテンツ業?

(定義)
第二条 この法律において「コンテンツ」とは、映画、音楽、演劇、文芸、写真、漫画、アニメーション、コンピュータゲームその他の文字、図形、色彩、音声、動作若しくは映像若しくはこれらを組み合わせたもの又はこれらに係る情報を電子計算機を介して提供するためのプログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わせたものをいう。)であって、人間の創造的活動により生み出されるもののうち、教養又は娯楽の範囲に属するものをいう。
2 この法律において「コンテンツ制作等」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
一 コンテンツの制作
二 コンテンツの複製、上映、公演、公衆送信その他の利用(コンテンツの複製物の譲渡、貸与及び展示を含む。)
三 コンテンツに係る知的財産権(知的財産基本法第二条第二項に規定する知的財産権をいう。以下同じ。)の管理
3 この法律において「コンテンツ事業」とは、コンテンツ制作等を業として行うことをいい、「コンテンツ事業者」とは、コンテンツ事業を主たる事業として行う者をいう。

コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=416AC1000000081

ブロガーは「コンテンツ業」を営む「コンテンツ事業者」とみなすこともできるでしょう。

「コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律」に以下のような記載があります。

  • 「コンテンツ」とは、映画、音楽、演劇、文芸、写真、漫画、アニメーション、コンピュータゲームその他の文字、図形、色彩、音声、動作若しくは映像若しくはこれらを組み合わせたもの
  • 人間の創造的活動により生み出されるもののうち、教養又は娯楽の範囲に属するもの
  • 「コンテンツ事業」とは、コンテンツ制作等を業として行うこと
  • 「コンテンツ事業者」とは、コンテンツ事業を主たる事業として行う者

だいたいのブログは「文字・写真・イラスト」などを組み合わせたもので、「教養又は娯楽の範囲に属するもの」だといえます。
そして、これらを生み出すブロガーは「コンテンツ制作」を行う「コンテンツ事業者」だとみなせます。

「コンテンツ業」は法定業種70種類の中に含まれていません。

画家・小説家などの創作活動を行う職業が個人事業税の対象外となっている事実から考えると、「コンテンツ事業者」も既存の画家・作家と同等の扱いを受けるべきでしょう。

ただし、確定申告時に職業欄に「コンテンツ業」と書いても、「コンテンツ業って何ですか?」と聞かれると思います。
そして、「よく分らないから『デザイン業』に分類しときますね」みたいなことになる気がします。

都道府県税事務所の担当者は、法律のすべてを把握しているわけではありません。
上手に説明をしないと適当な対応をされてしまいます。

まとめ

個人事業税は都道府県の管轄。

ブロガーをどの業種に分類するのかは、都道府県によって対応が異なる。

ブロガーは記事を書くのがメインなら文筆業、イラストを公開するのがメインの絵師なら画家、WEB漫画を公開しているなら漫画家。
サイトの内容によって分類されるべきだと思います。

文章を書いて、紙にして出版すれば非課税だけど、ブログに乗せてマネタイズすると課税とか意味が分からん。

マネタイズを基準にブロガーを広告業に分類するのは明らかにおかしい。
そんなことをしたら、農業だって漁業だって、獲れたものを最終的には業者に販売するから「物品販売業」みたいな話になってしまいます。

そもそもなんで業種によって課税されたりされなかったりするのか。
法定業種など無くして、一律5%にすればいいのに。

都道府県ごとに対応が異なるのは、法的な根拠がなく、その場その場で恣意的な運用をしている証拠です。
この情報が広まって、全国的に統一の見解が作られることを願います。

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