サメの第6感 ロレンチー二器官とは?

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サメは海の王者として恐れられているが,その秘密は鼻面にある。サメの鼻先には,周囲の電場を感じとることができる特殊なセンサーが備わっているのだ。このセンサーは「ロレンチー二器官」と呼ばれ,サメの狩りに欠かせない役割を果たしている。この記事では,ロレンチー二器官の発見から,その仕組みと機能,そして人間との関係について紹介する。

サメの第6感 ロレンチー二器官とは?

ロレンチー二器官は,サメの鼻面に点々とあいている孔の奥にある感覚器官である。この器官は17世紀後半にイタリアの解剖学者ステファノ・ロレンチー二によって発見されたが,その役割は長い間不明だった。19世紀になって,顕微鏡で調べられ,それが感覚器官であることがわかったが,何を感知するのかは依然として謎だった。電気を感知することがわかったのは,さらに100年後の1960年代になってからだった。

電気感覚の仕組みと機能

ロレンチー二器官の孔の奥には,ゼリー状物質が詰まったチューブがある。このチューブの中には,電気刺激に反応する神経細胞がある。周囲の電場の変化によって,チューブ内のゼリーの電位が変わり,神経細胞が興奮する。その信号が脳に伝わり,サメは電場の分布を感じとることができるのだ。

サメはこの超高感度の電気センサーを獲物の位置特定に使っているらしい。実は魚はいわば微弱な電池のような存在でもある。魚の細胞中の塩分濃度と海水のそれとが異なることで,魚と海水の間に電位差が生じるのだ。ただ,それによって周囲に作られる電場は非常に微弱だ。ところが実験の結果,海中の1cm離れた2点間に100万分の1ボルトという電位差が存在するだけでも,サメはそれを感知できることが明らかになった。

サメは血のにおいを手がかりに遠方の獲物を探知し,接近してからは電気感覚で相手を“見て”いる可能性が高い。魚が発生する電場を模擬できる電極を海中に下ろし,電極から少し離れたところに魚のすり身を置いてみた。サメはすり身に引き寄せられるようにやってきたが,最後の瞬間,サメが噛みついたのはすり身ではなく電極の方だった。

人間との関係

サメの電気感覚は,人間との関係にも影響を与える。一方では,サメを人や魚網から遠ざけることができるかもしれない。電極を海中に設置し,サメが嫌うような電場を発生させることで,サメを追い払うことができるという研究がある。これは人を助けるためだけではない。サメの命を救うのにも役立つのだ。毎晩,世界の海では5万匹ものサメが網に誤って捕まっている。サメが電気感覚を狩り以外にどう利用しているのかも興味深い。例えば,サメは電気感覚で仲間とコミュニケーションをとっているのだろうか?

サメの電気感覚は,海の中での生活に適応した驚異的な能力である。サメの鼻面に隠されたロレンチー二器官は,サメの狩りだけでなく,サメと人間の関係にも影響を与える可能性がある。サメの電気感覚についてもっと知ることで,サメの生態や保護についてもっと理解することができるかもしれない。

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