玄倉川水難事故、通称DQNの川流れ

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玄倉川(くろくらがわ)水難事故とは?

1999年8月13日、神奈川県山北町(やまきたまち)を流れる玄倉川(くろくらがわ)の中州でキャンプをしていた18人が大雨による増水によって流され、うち13人が死亡した事故です。

増水した川の中に取り残された18人が救助を待つところ、そしてあえなく流されていくところがリアルタイムにテレビ中継され注目を集めました。

また、被救助者によるレスキュー隊への暴言や、避難勧告を無視し続けたという事故の経緯、グループのリーダー格である加藤直樹の事故後の言動の異常性についても話題となりました。
(13名が亡くなっていますがリーダーの加藤直樹は生き残りました)

山北町は、2019年10月の台風19号でも水害により断水、自衛隊の給水車が神奈川県庁によって阻止されるという事件があったところです。
水害が起こりやすい地域のようですね。

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事故に遭った人たち

横浜市内の廃棄物処理業者・富士繁の社員及びその家族・友人ら25名が玄倉川でキャンプを行っていました。
そのうち4名はもともと日帰りだったため帰宅。
テントにて宿泊予定だった21名の内、3名も警察の避難勧告に従い帰宅。

警察の避難勧告を無視し、玄倉川の中州にてテントを張り夜を過ごした18名は翌朝になり増水した川によって流されました。

川に流された18名の内、5名は運よく岸に流れ着き生還、それ以外の13名は下流にて死体となって発見されます。

被害に遭ったのは全員が同一グループのメンバー。
富士繁の社員である加藤直樹をリーダー格とするグループの人たちでした。

当時、現場には50組ほどの人たちがキャンプを行っていましたが、加藤グループを除くすべての人たちがダム関係者および警察の警告に従い非難を行いました。
しかし、加藤グループのメンバーはダム関係者や警察の警告を無視、むしろ喧嘩腰で挑発をするような始末でした。

そして、警告を無視して居座る加藤グループの異常性や暴言の数々から玄倉川水難事故は「DQNの川流れ」の別名で呼ばれています。

DQN(ドキュン)というのは、品位や教養が無く反社会的な言動をする人たちを指すネットスラングです。
煽り運転で逮捕されるような人たちをイメージしてもらうと分かりやすいかと。

玄倉川の地形

玄倉川は丹沢山地(たんざわさんち)から見ると谷底に位置します。
丹沢山地の最高峰は蛭ヶ岳(ひるがたけ)、標高1673メートル。
山頂から玄倉川までの標高差は1400m、傾斜も45度と切り立った崖になっています。

そのため、周辺の山々で降った雨水が玄倉川に流れ込み、一気に増水しやすい構造になっています。

また、玄倉川の事故現場となったのは堆砂地となっていて、上流から流れて来た土砂が溜まってできた地形です。

事故が起こるのは必然だった

事故現場の堆砂地には草木が生えていません。
つまり、そこは頻繁に水没するので植物が育たない場所だということが分かります。

また、玄倉川の上流にはダムがあります。
当時、ダムの収容量を越える雨量があり、ダムの決壊を防ぐために放水を行っています。
当然ながら、放水前にはダム職員から避難勧告があり、サイレンも鳴らしました。

50組ほどいたキャンプ客たちは警告に従い帰っていきましたが、なぜか、加藤グループだけは再三にわたる警告を無視し続けました。

ダムの収容能力を超えるほどの雨量、ダムからの放水、玄倉川が増水することは必然でした。

「増水するかもしれない」ではなく「増水する」から警告をしていたのです。

時系列で事件を追う

1999年8月13日(事故前日)

  • 午前10時
    加藤グループが玄倉川の中州にテントを張る
  • 15時
    天候が悪化、ダム職員がキャンプ客に対して警告(1回目)
    加藤グループ以外のキャンプ客たちは避難
  • 16時50分
    神奈川県全域に大雨洪水注意報発令
  • 19時
    加藤グループ25名の内、当初から日帰りを予定していた4名が帰宅
  • 19時35分
    玄倉川上流の玄倉ダムで放流予告のサイレンを鳴らす
  • 19時50分
    ダム職員による避難勧告(2回目)
  • 20時06分
    ダム職員から警察に通報
  • 20時20分
    玄倉ダムが放流を開始
  • 21時10分
    警察官が到着。
    ダム職員とともに中州にいる加藤グループに対し退避勧告(3回目)
    加藤グループ21名のうち3名は警察の指示に従い避難
    18名は警察の指示を無視して居直る

1999年8月14日(事故当日)

  • 5時35分
    神奈川県全域に大雨洪水警報発令
  • 6時
    前日の夜に避難したメンバー3人が現場を再訪
    現場に居座るメンバー18人に対して説得を試みる
    玄倉川の水量は膝下、ぎりぎり歩いて渡ることができた
  • 6時35分
    玄倉ダムの貯水量が限界を迎え本格的に放流を開始
  • 7時30分
    警察官が再び退避を要請するも、加藤グループはこれを無視
  • 8時4分
    前日に非難したメンバーが消防に119番通報、救助要請を行う
  • 8時30分
    中州が完全に水没、テントが流される
    加藤グループがテントを張っていた中州から川岸までは80m
    玄倉川の水位は膝上まで上がってきており、自力での渡河は不可能な状態に
  • 9時7分
    通報を受けた足柄上消防組合の本部から救助隊5人が現場に到着
    レスキュー隊でも川を渡るのは不可能な状態、増員を待つ
  • 10時
    レスキュー隊の増員やテレビカメラが到着しリアルタイムで様子が全国中継される
  • 10時10分
    ヘリコプターの出動が要請されるが、強風と濃霧の影響で出動できず
  • 10時30分
    対岸に向けてロープ銃を発射するも失敗
  • 10時45分
    再び対岸に向けてロープ銃を発射するも失敗
  • 11時
    玄倉ダムが警察からの要請を受け放流を中止
  • 11時5分
    水量が玄倉ダムの貯水能力を越える
    決壊防止の為に放流を再開
  • 11時38分
    水深が2メートルに達する
    中州に陣取っていた加藤グループ一行は胸まで水に浸かった状態
    限界を迎えた18人全員がまとめて濁流に流される

DQNグループによる数々の暴言

増水により18名が流されたというだけであれば痛ましい事故として同情の声が上がったでしょう。
しかし、再三の避難勧告を無視して居座り続けた点、救助隊への暴言、救助後の異常行動などにより、同情どころか加藤グループ一行に対しては多大なバッシングが起こりました。

加藤グループ一行は以下のような言葉を発したとされています。

避難勧告に来たダム職員や警察官に対して

「早く失せろ、殴るぞ」
「放っておいてくれ、こっちは楽しんでんだよ」
「地元の人は臆病」
「田舎人は他人のプライバシーを侵すのが趣味なのか」
「うるせえ、警察にそんなこと言われる筋合いはない」

救助隊に対して

「おい、こら、ヘリを呼べ」
「もたもたすんな」
「仕事なんだから早く助けろ」

救助後、地元住民に対して

増水した玄倉川に流された18名、そのうち5名は運よく対岸に流され命を取り留めました。
しかし、対岸へ到着後もレスキュー隊に発見され救助されたのは、一夜明けた1999年8月15日のことでした。

お腹を空かせているだろうと地元住民が善意でおにぎりを差し入れると加藤直樹は一口だけ食べて「まずい」と発して、そのおにぎりを投げ捨てたといいます。

捜索隊に対して

加藤直樹ら5名を収容後も、行方不明となっている残りの13名について、340名もの人員を投入して捜索が行われていました。

そんな中、加藤直樹は行方不明者の安否を気遣うそぶりも無く
「テントを回収したら返して欲しい」
と言い放ったそうです。

玄倉川水難事故のその後

ダム職員や警察官からの再三の警告にも関わらず避難を行わないなどの異常性、また、グループのリーダーである加藤直樹が生き残ったことから、保険金目的の殺人ではないのかとの憶測まで流れました。

事故の映像が全国ネットでリアルタイムに流れ、大きな話題になったことから、記者会見が開かれるのではなないかと見られていましたが、加藤直樹を含む生存者5名がメディアの前に姿を現すことはありませんでした。

そのため、なぜ退避勧告を無視し続けたのかなど、詳しい動機は不明なままとなっています。

また、この事故に関して4800万円の救助費用がかかったといわれています。

避難勧告を無視し続けた点から、レスキュー費用は生存者たちに請求されるべきだという世間の声も上がっていましたが、これらの費用はすべて公費で賄われ、本人たちに請求はいかなかったようです。

玄倉川水難事故の教訓

加藤グループがキャンプを行っていたのは、本来はキャンプ地ではありません。
車の乗り入れ禁止のエリアに車で侵入し勝手にキャンプを行っていました。

加藤グループ以外のキャンプ客も複数いたことから、そこでキャンプをすることが慣例となっていて、「みんなやってるから大丈夫だろう」という雰囲気があったことは想像ができます。

しかし、車が進入禁止になっていたり、キャンプが禁止されているのには訳があります。
キャンプを行う場合は、周りの雰囲気に流されず、安全確認や情報収集は十分に行ってください。

特に地元の人や施設の人からの指示には絶対に従ってください。
勝手な自己判断をすると重大な事故を招く危険があります。

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