液体ミルク(乳児用調整液状乳)とは?
乳児用調整液状乳、通称「液体ミルク」とは、液体の状態で売られている赤ちゃん用のミルクです。
赤ちゃん用のミルクといえば、日本では粉ミルクが一般的。
粉末状のミルクをお湯で溶かして人肌に冷ましてから飲ませるやつですね。
液体ミルクは開封して哺乳瓶に注ぐだけですぐに授乳ができるすぐれもの。
調理の手間がありません。
そのため、災害対策や育児の負担を減らすものとして注目を集めています。
夜間の授乳など、お湯を沸かして、粉を溶かして、人肌に冷ましてという時間のかかる作業をやっているとその間は赤ちゃんが泣きっぱなしだったりします。
親の負担を減らすだけではなく、赤ちゃんにとってもすぐにミルクが飲めるというメリットは大きいです。
全国のドラッグストアやコンビニなどで購入できます。
調整液状乳と調整粉乳の違い
調製粉乳とは、粉ミルクのこと。
調整液状乳とは、液体ミルク。
栄養価は粉ミルクと液体ミルクでほぼ同じ。
法律で成分の基準値が決められているので安心です。
賞味期限は液体ミルクの方が短いです。
特に、開封後はすぐに使いきらなければなりません。
液体ミルクは1食分ずつの分量になっています。
半分しか飲まなかったから冷蔵庫で保管して残りは明日飲ませる、みたいなのはダメです。
粉ミルクの場合は、数週間分の分量が1つの缶の中に入っています。
日数をかけて使い切るのが前提の作りなので、賞味期限も長いです。
菌が繁殖するには水分が必要なので、水分が少ない粉ミルクは痛みにくいです。
液体ミルクは法律で禁止されていた
液体ミルクは法律で禁止されていました。
正確には許可をするための基準がありませんでした。
厚生労働省が管轄する食品衛生法の付則である「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(通称:乳等省令)」では以下のように記載がありました。
「調製粉乳」とは、生乳、牛乳若しくは特別牛乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料とし、これに乳幼児に必要な栄養素を加え粉末状にしたものをいう。
乳及び乳製品の成分規格等に関する省令
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=78333000&dataType=0&pageNo=1
省令に「乳幼児に必要な栄養素を加え粉末状にしたもの」という記載があるために、粉上のものしか乳幼児用のミルクと認められない状態でした。
液体ミルクを作ること自体は可能だったはずですが、発売しても「乳飲料」という区分になってしまうので、パッケージに赤ちゃんの写真を載せたり乳児用であることを記載するとグレーゾーンでした(違法になる可能性がありました)
2018年に液体ミルクが解禁
2018年8⽉8⽇に⾷品衛⽣法の乳等省令が改正、液体ミルクに関する記載が追加されました。
「調製液状乳」とは、生乳、牛乳若しくは特別牛乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料とし、これに乳幼児に必要な栄養素を加え液状にしたものをいう。
これにより、日本国内でも液体ミルクが解禁、2019年11月現在、グリコと明治の2社から液体ミルクが発売されています。
2020年には3社目となる雪印も液体ミルクを発売することを公表しています。
液体ミルク解禁のきっかけは熊本地震
液体ミルクが注目を浴びたのは2016年に起きた熊本地震がきっかけでした。
このとき救援物資としてフィンランドから5000食分の液体ミルクが被災地に届けられました。
粉ミルクは粉末を熱湯で溶かして作ります。
殺菌の意味もあるので必ず70度以上の熱湯が必要になります。
被災地では水や燃料の確保が難しく、粉ミルクがスムーズに作れない場合があります。
また、母親はストレスなどで母乳が出にくくなったり、避難所での共同生活では人目を気にせず授乳できる環境を準備できないなどの問題が発生します。
そんなときに、液体ミルクは開封してそのまま使用できるため非常に便利でした。
日本ではその存在自体をほとんど知られていなかった液体ミルク。
この熊本地震でのできごとをきっかけに署名活動が盛り上がり、国内でも法整備が進みます。
そして2年かけてようやく液体ミルクが発売できるところまでこぎつけました。
2018年に法的に液体ミルクが解禁されたことで、各社が製品化を推進。
2019年3月にグリコは国内初の液体ミルク「アイクレオ」を発売、2019年4月には明治から2番手となる液体ミルク「らくらくミルク」が発売されました。
海外では液体ミルクが普及している
ヨーロッパでは粉ミルクと液体ミルクの比率でいうと30%程度の割合で液体ミルクがシェアを占めています。
北欧で特に普及率が高く、スウェーデンでは47%、フィンランドでは92%となっていて、もはや粉ミルクよりも液体ミルクの方が主流です。
グリコ「アイクレオ」と明治「らくらくミルク」の違い
2019年11月現在、日本国内で発売されている液体ミルクは2種類。
- グリコの「ICREO アイクレオ 赤ちゃんミルク」
- 明治の「明治ほほえみ らくらくミルク」
製品名 | ICREO アイクレオ 赤ちゃんミルク |
明治ほほえみ らくらくミルク |
---|---|---|
社名 | グリコ | 明治 |
発売日 | 2019年3月11日 | 2019年4月26日 |
容器 | 紙パック | スチール缶 |
容量 | 125 ml | 240 ml |
価格(税別) | 200円 | 215円 |
賞味期限 | 6か月 | 1年 |
大きな違いは内容量と容器、価格はどちらも大差ありません。
容器の違い
- グリコ「アイクレオ」: 紙パック
- 明治「らくらくミルク」: 缶
容器の違いが賞味期限にも影響していて、
- 紙パック入りのグリコ「アイクレオ」: 半年
- 缶入りの明治「らくらくミルク」: 1年
となっています。
缶の方が耐久性が高く、光も空気も遮断してくれるので保存性が高いです。
紙パックはゴミとして捨てやすいですが、缶は扱いに困るかもしれません。
お住まいの自治体にもよると思いますが、資源ごみの日が月に1回しかないと大量の空きかんが溜まると思います。
1日8本×30日とした場合、月に240缶の液体ミルクを使うことになります。
母乳・粉ミルク・液体ミルクを併用する人が多いと思うので、ここまでひどいことにはならないと思いますが、使用後のことまで考えると容器に関してはグリコ「アイクレオ」の紙パックに軍配が上がりそうです。
容量の違い
グリコと明治では容量が倍ほども違います。
- グリコ「アイクレオ」: 125 ml
- 明治「らくらくミルク」: 240 ml
しかし値段はほぼ同じ
- グリコ「アイクレオ」: 200円
- 明治「らくらくミルク」: 215円
明治のほうが容量は倍なのに値段が少ししか違わないのでお得感があります。
しかし、液体ミルクは1回ずつの使い切りが前提の商品です。
月齢3ケ月以下くらいの赤ちゃんだと240 mlは1回では飲み切れないと思います。
残った分はもったいないですが廃棄しましょう。
未開封の液体ミルクは密閉状態で殺菌してあります。
開封後は空気中の雑菌や手や口に触れた部分からの雑菌が混入しますので、飲み残しの再利用は厳禁です。
使い方の違い
どちらも容器から哺乳瓶に移し替えて使います。
グリコ「アイクレオ」は紙パックにストローが付いています。
このストローを紙パックに挿してストロー経由でちょろちょろと哺乳瓶に注ぎます。
明治「らくらくミルク」は缶のプルタブを開けてそこから哺乳瓶に移し替えます。
そのまま飲めるわけではなく、液体ミルク+哺乳瓶がセットで必要というわけですね。
海外では哺乳瓶の飲み口の部分(人工乳首)を液体ミルクの容器に直接装備できるものがあったりします。
便利そうですが日本ではまだこのタイプは発売されていません。
味の違い
どうやら、グリコ「アイクレオ」と明治「らくらくミルク」では味が違うようです。
赤ちゃんによっては
- グリコ「アイクレオ」は良く飲んでくれるけど、明治「らくらくミルク」は嫌がって飲まない
- グリコ「アイクレオ」は残してしまうけど、明治「らくらくミルク」はおいしそうに飲む
のように反応がわかれることがあるそうです。
どちらがおいしいというよりは、赤ちゃんの好みの問題ですね。
もちろん、どちらも好き嫌いなく飲む赤ちゃんもいます。
容量や保存期間など大人の都合で選びがちですが、大量に買い込む前にまずは我が子の飲みっぷりを確かめてみたほうがいいですね。
液体ミルクの成分表
乳児用調整液状乳(液体ミルク)を名乗るうえで、必要になる成分が規格で定められています。
そのため、どのメーカーの液体ミルクを購入しても栄養価としてはほぼ同じものができあがります。
また、粉ミルクの場合も同様に基準に従って作られるので「粉ミルク vs 液体ミルク」を比較した場合も栄養価はほぼ同じです。
成分 | 100kcal当たりの組成 |
---|---|
たんぱく質 | 1.8~3.0 g |
脂質 | 4.4~6.0 g |
炭水化物 | 9.0~14.0 g |
ナイアシン | 300~1500 μg |
パントテン酸 | 400~2000 mg |
ビタミンA | 60~180 μg |
ビタミンB1 | 60~300 μg |
ビタミンB2 | 80~500 μg |
ビタミンB6 | 35~175 μg |
ビタミンB12 | 0.1~1.5 μg |
ビタミンC | 10~70 mg |
ビタミンD | 1.0~2.5 μg |
ビタミンE | 0.5~5.0 mg |
葉酸 | 10~50 μg |
ビオチン | 1.5~10 μg |
イノシトール | 4~40 mg |
亜鉛 | 0.5~1.5 mg |
塩素 | 50~160 mg |
カリウム | 60~180 mg |
カルシウム | 50~140 mg |
鉄 | 0.45 mg以上 |
銅 | 35~120 μg |
セレン | 1~5.5 μg |
ナトリウム | 20~60 mg |
マグネシウム | 5~15 mg |
リン | 25~100 mg |
αリノレン酸 | 0.05 g以上 |
リノール酸 | 0.3~1.4 g |
Ca/P | 1~2 |
リノール酸/αリノレン酸 | 5~15 |
液体ミルクの使い方
「温め不要でそのまま授乳できます」
「栄養組成は調乳後の粉ミルクと同じ」
「飲み残しは雑菌が繁殖しやすいので与えないでください」消費者庁
乳児用液体ミルクってなに?
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/health_promotion_190304_0003.pdf
消費者庁の資料によると
- 「温め不要でそのまま授乳できます」
- 「栄養組成は調乳後の粉ミルクと同じ」
- 「飲み残しは雑菌が繁殖しやすいので与えないでください」
などのように説明があります。
常温でOK、人肌に温めるのもOK
粉ミルクは熱湯で粉を溶かしてから人肌に冷ましてから飲ませます。
液体ミルクの場合は、湯煎したり、人肌に温める必要はなく、常温のままで授乳してもOK。
粉ミルクは缶の中にたくさん粉末が入っているので、開封してから数日かけて使い切ることになります。
そのため、開封後に空気中の雑菌などが混入する可能性があります。
そこで、熱湯で溶かすことには殺菌の意味もあります。
それに対して、液体ミルクは1回ずつの使い切りが前提です。
液体ミルクを容器に詰めた後に殺菌処理をしているので、使用の際に再度過熱をする必要はありません。
ただし、実際の使用の現場では
- 常温のままでは赤ちゃんがあまり飲んでくれない
- 人肌に温めるとよく飲んでくれる
という声が上がっています。
赤ちゃんみんながそうなるわけではなく、そういう子もいるといった感じです。
個人差があるとは思いますが、母乳や粉ミルクで普段から人肌のものを飲ませている場合には、液体ミルクも人肌に温めた方が赤ちゃんにとっては飲みやすいのかも。
冷蔵庫で冷やしてもいいの?
メーカーや消費者庁の資料では常温での保存をするように書いてあります。
常温というのは通常15~25度のことをさします。
直射日光、火気の近く、車内など熱のこもりやすい場所での保管は避けましょう。
逆に冷やすのは大丈夫なのかというと、OKです。
夏場は室内に放置すると15~25度の範囲内に収めるのが難しい。
その場合は冷蔵庫で保管しましょう。
高温で放置するよりは、15度以下になってしまっても冷蔵庫で保管する方がいいです。
冷凍庫はミルクの成分が変質してしまう可能性があるので避けましょう。
ただし、開封前のものを冷蔵庫で保管するのは構いませんが、開封後のものは冷蔵庫に保管したとしても再利用できません。
痛んですっぱくなっていたりしても赤ちゃんはそのことを伝えることができません、一度開封したものは残ってしまっても廃棄しましょう。
どうしてももったいないと思う場合は親が飲みましょう。
また、冷蔵庫で保管した場合、赤ちゃんに授乳する際には室温にもどしてから使用します。
赤ちゃんは内臓が未発達なので消化器官が弱いです。
冷たいものはすぐにお腹を壊すので与えてはいけません。
災害に備える
断水したり、電気やガスが止まった時の為に液体ミルクを買い置きしておくと役に立ちそうです。
授乳の為に必要な物
- 粉ミルク: 粉ミルク + 哺乳瓶 + 水 + 加熱器具 + 燃料
- 液体ミルク: 液体ミルク + 哺乳瓶
「水」と「お湯を沸かす環境」が不要な分だけ、圧倒的に液体ミルクの方が便利です。
災害時にはストレスで母乳が出にくくなることもあります。
また、急病で服薬の際には母乳を与えるのは避けたほうがいいです。
普段は母乳派の人でも念のため液体ミルクは常備しておいた方がいいでしょう。
使い捨て哺乳瓶も便利
災害時で断水していると哺乳瓶をキレイに洗うことができません。
液体ミルクが便利とはいっても哺乳瓶は必要になりますので、使い捨ての哺乳瓶も選択肢の1つとして買い置きしておくと役立つでしょう。
コメント