済々黌高校の元生徒が熊本県を1円提訴、丸刈り強制で鬱・不登校・退学に

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済々黌高校の元生徒が熊本県を1円提訴、丸刈り強制で鬱・不登校・退学に

熊本県立済々黌(せいせいこう)高校の元生徒が強制的にバリカンで髪の毛を刈られ丸坊主に。

済々黌高校は熊本県有数の進学校。
お笑いコンビ「くりぃむしちゅー」の上田晋也(うえだ しんや)さんと有田哲平(ありたてっぺい)さんは同校出身の同級生。

元生徒の男性は2017年4月に済々黌高校に入学。
入部先のソフトテニス部で3年生の先輩から強制的に丸刈りにされた。
「明日までに丸刈りにしてこい」のように命令されたのではなく、3年生が1年生の髪の毛を直接切った模様。

これをきっかけに被害者の生徒はソフトテニス部を退部、うつ状態となり不登校に。
投稿日数が足りず2年生に進級できなかったことから同校を退学し現在は通信制の高校に再入学している。

丸刈りの件は校則で規定されているわけではなく、「伝統」と称して行われた。

今回提訴に踏み切った済々黌高校の元生徒だけが「いじめ」のターゲットとなり「丸刈り」にされたわけではなく、ソフトテニス部の1年生全員が「丸刈り」にされている。

男性側は同校内で「シメ」と呼ばれる先輩からの強制指導行為は、100年以上の歴史を持つ伝統校に根ざした独特の文化と指摘。
「学校側が違法なシメを黙認・放置し、男性が不登校となった原因と知りながら対策を講じなかったのは安全配慮義務違反に当たる」としている。
そして、賠償金が目的ではないとして賠償金額を1円に設定、「シメ文化の見直し」と「謝罪」を求めて提訴を行った。

熊本県は「元生徒の訴えと不登校や退学との間に因果関係はないと考えている。学校の対応は適切だった」として争う姿勢を示している。

髪を切るのは傷害罪?暴行罪?

過去の判例では、髪の毛を切られた場合には暴行罪が適用されています。
まれに傷害罪が適用された事例もあるようですが。

傷害罪と暴行罪の違い

分りやすく説明すると、

  • 暴行罪: 殴る
  • 傷害罪: 殴ってケガを負わせる

という感じです。

難しく説明すると暴行を加えると暴行罪、暴行を加えて傷害を負わせると傷害罪になります。

暴行罪は、刑法208条にて以下のように規定されています。

「第208条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。」

傷害罪は、刑法204条にて以下のように規定されています。

「第204条 人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」

「暴行」には「殴る」や「蹴る」のようなもののほかにも「髪の毛を切る」のような行為も含まれます。

また、「傷害」の中には「ケガ」以外にも、「下剤を飲ませて下痢を起こさせる」や「暴言を加えてPTSDを起こさせる、不眠にさせる」などの体調を害する行為全般が含まれます。

「髪の毛を切る」は暴行罪ですが、その結果として「うつ」などの病気を発症したとしたら傷害罪の適用までありえます。

なぜ熊本県を提訴?

今回の事件で元生徒は、熊本県を提訴しています。
なぜ、事件があった済々黌高校や直接的な手を下した済々黌高校の先輩ではなく、熊本県を訴えるのでしょうか?

済々黌高校は熊本の県立高校です。
人事権などは済々黌高校の校長ではなく、熊本県(熊本県教育委員会)が持っています。
つまり、熊本県が本体で、済々黌高校は熊本県という組織の中のひとつの部門にしかすぎません。

一般企業で例えると、イオン○○店で不祥事があったときに「○○店」を訴えるか「イオン本社」を訴えるかといったら、「イオン本社」を訴えます。
会社は「法人」といって法律上は「人」として扱うので訴えることができます。
「○○店」単体では「法人格」を持っていないので訴えることができません。
(イオンさんたとえに使ってごめんなさい)

法人格がなくても訴えられるケースはありますが、当事者能力がうんぬんという話になってちょっとめんどくさいです。

私立の学校の場合は学校法人というのがありますが、公立学校は法人ではありません。
公立の学校の場合は都道府県の中の一部署というような扱いです。
つまり、熊本県立済々黌高校は熊本県の一部であって、済々黌高校単独では法人ではありません。

そして、地方公共団体は法人格を持っています。
熊本県には法人格があるので裁判で訴えることができます。

まとめ

「部活に入ると坊主にされるなんてよくある話」
「いまどき丸坊主なんて時代錯誤」
「そんなことで裁判を起こすの?」

ネット上では賛否両論ですね。

「坊主にされるのが嫌で野球部ではなくサッカー部に入り、日本代表にまで上り詰めた」みたいな逸話もありますね。
この件以外にも、見えない所で人材流出や機会損失は発生しているはず。

「くだらない暗黙のルールが生産性を下げる」というのはどこの組織でもよく見かけます。
そういった点に一石を投じる意味で今回の裁判はいいんじゃないかと思います。

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