クエーサーとは?

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クエーサーとは?

クエーサーは、非常に離れた距離に存在し、極めて明るく輝いているために、光学望遠鏡では内部構造が見えず、恒星のような点光源に見える天体のことです。”クエーサー”という語は、「準恒星状」(quasi-stellar)の短縮形です。

QSSとQSO:異なるクエーサーの顔

この謎めいた宇宙の輝きには、強力な電波を放射するQSS(準恒星状電波源)(英: quasi-stellar radio source)と、比較的静かなQSO(準恒星状天体)(英: quasi-stellar object)の2つの主要なカテゴリがあります。初めに発見されたのはQSSでしたが、その後、QSOの発見が増加しました。

クエーサー:日本語での歴史

日本語では、これらの輝く天体はかつて「準星」として知られていました。

遠くの活動銀河核との関連

現在、クエーサーは非常に遠方に存在する活動銀河核の一種とされています。その構造は、比較的近傍に存在するセイファート銀河などと同じく、活動銀河核を持つ銀河の一種と考えられています。

謎めいたスペクトル

クエーサーのスペクトルは、大きな赤方偏移を持っています。この赤方偏移の大きさから、クエーサーが地球から遠く離れた場所に存在することが明らかになります。赤方偏移は、ドップラー効果により、光源が地球から極めて高速で遠ざかっていることを示します。この非常に遠方にあるにも関わらず、クエーサーは明るく見え、その実際の明るさから推測されるエネルギーは、典型的な銀河の100倍に達すると考えられています。現在、最も遠いクエーサーは、2017年12月6日に発見されたULAS J1342+0928で、その赤方偏移はz = 7.54に達しています。

電波の謎

クエーサーの中には明るさが急激に変化するものも存在します。これは、クエーサーの本体が非常に小さいことを示唆しています。最も明るく見えるクエーサーでも、わずかに13等級の明るさしか持たないことがあります。

全てのクエーサーが強力な電波を放射しているわけではありません。発見されているクエーサーの大部分は、電波の弱いクエーサー(英: radio-quiet quasar)であり、電波の強力なクエーサー(英: radio-loud quasar)は実際には全体の約10%にすぎません。

宇宙の輝きの起源

クエーサーは宇宙誕生後10億年も経たないうちに出現し、宇宙が20億~30億歳の頃に最も多く形成された天体の一つです。また、光学的激変天体(OVV)(英: optically violent variable)とされるクエーサーは、ブレーザーに分類されています。

特徴

今まで観測されている数百個のクエーサーは全て大きな赤方偏移を持っており、その値は0.16から7.5付近にまでにわたっています。距離に直すと600Mpcから4000Mpcという遠距離に存在していることになり、多くのクエーサーは1000Mpc以上の距離にあることが明らかになっています。観測されるクエーサーは非常に暗いが、これだけ大きな赤方偏移を生じるほど遠方にあることから、実際にはクエーサーは宇宙に存在する天体の中で最も明るいと考えられています。一般的にクエーサーの明るさは10^38 Wから10^42 Wに達し、平均的には10^40 Wの規模です。これは銀河系の明るさの1000倍、太陽の10兆倍である。また、光速度は有限であるから、これほどの遠距離にあるクエーサーを含む電磁波を観察することは、そのまま遠い過去の宇宙からの電磁波を観察していることになります。

非常に遠方にあっても観測できるほどの明るさをもつクエーサーは、その膨大なエネルギー源の推論から現在では活動銀河の一種と認識される場合が多い。すなわち、クエーサーの放射は相対論的ジェットやローブと呼ばれる構造を持つものもあり、クエーサーは電波・赤外線・可視光・紫外線・X線・γ線のあらゆる電磁波で観測されます。

クエーサーはまた、時間とともに明るさが変化(変光)することが分かっています。周期は数日、数時間、中には数週間、数ヶ月、数年というスケールで変化するものもあります。短い周期で変化することもあることから、クエーサーは非常に小さな領域からエネルギーを放出していると考えられる。大きな天体であれば、明るさの変化を起こす原因は光速を超えずに天体全体に伝わり、それには時間がかかることになりますが、天体全体が短い周期で変光するということは、変光の原因がなんであれ変化が天体全体にわたるまでに時間を要していない、すなわち天体は小さいと解釈されます。

放射の発生機構

クエーサーは活動銀河とほぼ同様の特徴を示すので、多くの研究者がクエーサーの放射を小さな活動銀河と比較してきました。クエーサーの正体として最も有力な説は、クエーサーは大質量ブラックホールをエネルギー源に持っている、というものである。クエーサーの強力な光度は、大質量ブラックホールを取り巻く降着円盤のガスや塵がブラックホールに落ち込む時の摩擦によって生み出されていると考えられています。この物理過程では落ち込む質量の約50%をエネルギーに変換することが可能で、核融合によるエネルギー変換が質量の数%にとどまるのに比べて非常に変換効率が良い。10^40 Wというクエーサーの平均的な光度を生み出すには、大質量ブラックホールは1年あたり恒星を10個飲み込む計算になる。現在知られている最も明るいクエーサーの場合には、毎年1000太陽質量程度の物質を消費していると考えられています。

また、クエーサーは、その周辺の環境によって「スイッチ」が入ったり切れたりすると考えられています。例えば、上に挙げたような割合で100億年も「餌」となる物質が供給され続けることはないと思われる。このメカニズムは、なぜクエーサーが初期の宇宙にのみ見られるのかという問題にもうまく説明を与える。つまり、降着円盤によるエネルギー生成は、大質量ブラックホールの

周囲の物質が全て消費し尽くされると停止するのである。このことから、我々の銀河系を含むほとんどの銀河は過去にクエーサーの段階を経験し、現在は中心のブラックホールに質量が供給されていないためにエネルギー放射活動をしない平穏な状態にある、とも考えられます。活動銀河や大質量ブラックホールによるエネルギー放射活動は現在でも見られるが、クエーサーが活動していた時期に比べて非常に少なくなっている、と解釈されています。

観測の歴史

クエーサーの謎めいた存在を解き明かす歴史は、その発見から始まりました。1950年代末に、電波源として観測されたクエーサーは謎に包まれたままでした。1960年に、3C 48という電波源から光学観測が成功し、そのスペクトルには奇妙な輝線が多く含まれていましたが、その意味はまだ解明されていませんでした。

さらに1963年、3C 273という電波源も光学観測され、同様の輝線が観測されました。オランダのマーテン・シュミットは、これらの輝線が水素のスペクトル線が赤方偏移したものであることを発見しました。これは、3C 273が地球から離れていることを示すもので、クエーサーとして新たに分類されました。

しかし、クエーサーの大きな赤方偏移に関しては、当初から議論が絶えませんでした。当時、クエーサーの膨大なエネルギー源の正体は謎であり、一部の学者は新たなエネルギー変換プロセスを提案しました。また、クエーサーの距離や赤方偏移の解釈も議論の的でした。

しかし、1970年代に入ると、降着円盤と宇宙ジェットのメカニズムが提案され、クエーサーのエネルギー源についての理解が進展しました。これはクエーサーが宇宙の謎を解く鍵であることを示し、宇宙論の新たな展望を提供しました。今日では、ほぼすべての研究者がクエーサーが宇宙論的距離にあると受け入れています。

宇宙の再電離とクエーサー

クエーサーは私たちに、宇宙の過去を解き明かす鍵を握っています。宇宙の再電離とは、最初に星が誕生した時期を示す重要な出来事の一つです。これは、冷えて中性の状態にあった水素が高エネルギー光線によって再び電離水素となる現象を指します。この出来事が宇宙に最初の星々が誕生した兆しとされています。

中性水素に対して短波長の光線が当たると、その光は吸収され、スペクトルに吸収線が現れます。しかし、電離水素に対しては光が吸収されません。遠い天体からのスペクトル観測では、宇宙空間に残るわずかな中性水素によって光が吸収され、ライマンαの森と呼ばれるスペクトルが生成されます。この現象はガン・ピーターソン効果として知られています。

長らくこの効果が観測されない中、21世紀に入り z = 6 付近のクエーサーからガン・ピーターソン効果による吸収領域が発見され、これは再電離前のクエーサーの存在を示唆しています。これは宇宙の誕生から約128億年前の出来事であり、宇宙誕生後1億年から10億年後に初代の天体が生まれ、宇宙の再電離が始まった可能性を示唆しています。

クエーサーの重要な特徴

クエーサーは、ヘリウムよりも重い元素を含んでいることが知られています。これは、初期のクエーサーが誕生するまでの期間に、銀河が恒星を大量に生成した時期があったことを示唆しています。

利用

クエーサーは遠くの宇宙からの電波を利用して、高精度な測定を行うために重要な役割を果たしています。 VLBI(超長基線電波干渉法)を用いて、クエーサーからの電波を2箇所で受信し、到達時間のずれを測定することで、大陸間の距離や地球の運動、プレートの動きなどを高精度で計測できます。これは、私たちの理解を深め、地球の変動や宇宙の謎に迫るために不可欠な手法です。

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